『前立腺癌、ステージⅣです。
リンパ節と骨に転移しています。』
医師からそう告げられたのは、
65日前のことでした。
5年生存率は30~50%。
「末期がん」を宣告されて、
一番に感じたことは、
「死ぬことになるのか」という思い、
そして、意外にも
「学びたい!」という思いでした。
これまで二千冊以上の書籍に
私淑と親炙を繰り返してきました。
著者の考えを知り、
自分ならどう考えるのか、
そして、どう行動に活かすのか?
そうした思いで取り組んできた読書を
「せきがくの旅」としてブログで発信
してきました。
そして、癌を伝えられても、尚、
再読と、新たに新書に取り組む気力が
あったのです。
本書「ブッダ いのちの言葉」は、
以前から気になっていた書籍です。
残された貴重な時間のひとつを
本書とともに過ごしてみたい、
その先に、ある期待を込めて
最後の「せきがくの旅」は、
始まりました。
本書は、5章で構成されています。
第一章 捨ててこそ得られるもの
第二章 心を整え自分と向き合う
第三章 いまここで精一杯生きる
第四章 いのちに感謝し生を楽しむ
第五章 幸福はどこにあるのか
本書で学んだ素敵な言葉
愛する人に花飾りを贈ろう
縁を広めて幸福な人々を増やそう
(本書「第一章」より)
人生の真理が心をゆさぶる、著者の命の言葉
ブッダは誕生後すぐに立って七歩歩き
右手を天に、左手を地に向け
「天上天下唯我独尊」と唱えた。
本書「いのちの言葉(ブッダ)」
(宮下真)のコラム「ブッダの歩んだ
道」に記された言葉です。
「ブッダ」とは、覚者、目覚めた人と
いう意味だそうです。
「唯我独尊」とは、すべての人がかけがえ
のない存在であり、それぞれが尊い使命を
持っているという教えであるようです。
何不自由なく過ごしていた王子が出家をし
山中6年間の修行を経た後、命を賭けた
断食で衰弱し、ビッバラ樹(菩提樹)の下
に座り瞑想。
そして、真理に目覚め「仏陀」となったと
いうことです。
こうした命がけの行いと経緯で生まれた
「成道」に、命の限りを告げられた私は
こころから私淑したいという思いに至り
ました。
本書で紹介されている紹介記事の中で
私が特に興味を惹かれた言葉を引用
しておきます。
◉本書に綴られた考え方を知り、
自分はどう考えどう行動に活すのか、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。
【引用5選】
❶欲望ばかり追い求めても心は渇き、
満たされることはない。
❷真実を語り乞われたら惜しまず与える
❸煩悩の火を消してから心ゆくまで笑おう
❹赦すという勇気で怨みも恐れもとり除く
❺真実を真実と見ることができないなら
心は救われない
本書に私淑して私が思うこと
「いまここで精一杯生きる」
~過去でも未来でもなく~
本書「いのちの言葉」の目次に目を通して
真っ先に飛び込んできたのは、第三章の
この言葉でした。
「過去でもなく未来でもなく」その先に
あると思われる「今この時を」という
言葉が心に降りました。
「相手の心に言葉の根が降りて、育つよう
な語り方」という言葉があります。
これは小林秀雄氏の言葉ですが、
私の中では、真にそう思える言葉でした。
前立腺癌の告知を受けて以降、
この言葉は、ずっと私の中で、
揺らめいています。
それは、良い意味でも、悪い意味でも。
両者を含めて今を生きることの
意味を探し求めています。
「言葉」は、生きる力を与えてくれます。
「学ぶ」意欲を授けてくれます。
故に今私は、心を前にして歩んでいます。
本書に綴られた言葉一つひとつに、
生きる意味を感じながら、残された人生を
歩んでいきたい
とそのように素直に感じています。
今は治まっている、あの背中の激痛、
そう遠くない将来にまた襲ってくることを
覚悟しながら、それでも希望は捨てず、
歩いていきます。
本書が、その勇気を与えてくれました。
まとめ(人生の真理)
この身はまもなく地上に横たわるだろう。
意識を失い、無用の木切れのように、
投げ捨てられて
これは、本書「いのちの言葉」の第四章
「いのちに感謝し生を楽しむ」に記された
言葉です。
人生の終焉を表わすに相応しい言葉です。
いのちの終わりをどう迎えるか。
「うらうらとしなんずるなと思ひとけば、
心のやがてさぞとこたふる。」
この西行の詩も、また心に沁みます。
じたばたしても始まりません。
命には限りがあり、それを今、
告げられたというだけのこと。
そう思えるようになった自分がいます。
残された時間、
「学びたい」という思いを連れ立って。
そして、ここまでの人生を振り返り、
共に歩んだ人たちの思い出と共に。
「読書」は、良いですね。
「言葉」は、良いですね。
最後の「せきがくの旅」を始めました。
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
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