古典の叡智を活かす『孫子・戦略・クラウゼヴィッツ』

書評

『戦略を学びたければ、斯界しかいの基本図書
「孫子」と「戦争論」の二書に親しんで
おく必要があるといわれる。』

これは、本書『孫子・戦略・クラウゼヴ
ィッツ』(守屋淳)の「序章」で紹介さ
れている内容を私の方で少し簡略化して
表現したものです。

実に興味を引く記述です。

孫武が著した「孫子」は大変有名である為
多くの人が手にしてきたと思います。

しかし、クラウゼヴィッツの「戦争論」は
孫子ほどには読まれていないのではないで
しょうか。

私も本書を読み進める中で、概要を理解で
きた程度と言えます。

改めて「戦争論」を読んでみたいと思って
いますが、しかし、本書を読み通すことで
多くのことを学ぶことができました。

・この二書の大きな違いは?

・それぞれの目指す目的は?

こうした疑問が湧いたのをきっかけに
「戦略論」を極め事業に活かすための
私の「せきがくの旅」は始まりました。

本書は以下の2部で構成されています。

・孫子と戦争論はなぜ対極的なのか
・全ての戦略には使うべき状況がある

スポンサーリンク

本書で学んだ素敵な言葉

すべてのものには、それをそれたらしめて
いる本質があり、それさえ掴めば残りの
すべてを押さえられる。

本書三章「戦争の本質」より

スポンサーリンク

古典の叡智を知り、現代の難題解決に活かしてほしい!

『孫子と戦争論は戦略的な発想が重要な点
で真っ向から対立している東西の古典だ』

これは、本書『孫子・戦略・クラウゼヴィ
ッツ』の一章に記されていた言葉です。

「本質的にどこが対立しているのか?」

ここをしっかりと押さえたうえで、
この斯界しかいの二書に私淑しておく必要が
あると強く感じました。

現代の多様化した課題を抱え、更に
日々増幅する諸問題、これらをさばき、
対処していくために。

事業を進めていくためには問題解決思考、
交渉思考に加えて戦略思考が必要であり
その教本となるのが対立するこの二書。

そう「直観」が、強く諭してくれた
ように感じたのです。

そして、本書を読み終えた際に感じたこと
は、自分独自の「ことの進め方」を確立で
きたという達成感でした。

学ぶ意欲は大切ですが、それだけでは、
ことを成すことはできない、自ら考え、
そして、「行動」を起こす必要がある。

これは、私の持論ですが、そのための
私淑の源書として、本書は相応しいと
感じています。

孫子(孫武)と戦争論(クラウゼヴィッ
ツ)の対立点を把握し、双方の自分に
馴染む考え方を吸収しておく、

非常に大事なことだと感じています。

一言でいうと、前者は「政治家目線」で
あり、後者は「生粋の軍人目線」である
と著者は記しています。

本書を通じて、その表現は、
実に得心の行く内容であることを
知りました。

これら二書から古典の叡智を知って
活かす、多様性に包まれる難題の解決に
挑んで頂きたいと願っています。

そして、古典を学ぶことで、ご自身の中
に生まれた新たな考え方を大事にして頂
きたいと思うのです。

大きな支えとなってくれるはずです。
本書は、お勧めの一冊です。

スポンサーリンク

古典の叡智を活かす著者の考え方

『東洋戦略論のバイブル「孫子」と、西欧
戦略論の雄「戦争論」を対比しつつ古典の
叡智を現代に活かす方程式を紹介する。』

これは、本書「孫子・戦略・クラウゼヴィ
ッツ」の表紙裏に記された言葉です。

「古典の叡智を現代に活かす方程式」と
いう記述にとても興味を惹かれました。

本書「序章」には、以下のような著者の
考え(本書の目的)が記されています。

本書では、孫子と戦争論の考え方を比べる
ことによって、「戦争以外の戦略ってどう
いうものだろう」「今生きるわれわれが真
に活かせる戦略とはなんだろう」といった
疑問にも答えることを目指していく。

これは、現代の多様化された世の中にあっ
て、日々難題課題を捌かねばならない、
特に経営者や部門責任者にとっては、
大変嬉しい試みといえます。

加えて、著者の次の記述も実に、
得心の行く内容です。

『戦略には、古今東西を通じてまぬかれな
い宿命がある。戦略が必要とされる局面と
は、理論の探究や学習いかんにかかわらず
結果がすべて、終わりよければすべてよし
という側面を持っているのだ。』

『戦略とは、誤解だろうが、生噛りだろう
が、それをうまく活かして結果をだした方
に軍配が上がる道具なのだ。』

実に明快な表現です。よくよく心しておく
必要があると言えます。

本書は、多くの方々に
一読をお勧めしたい一冊です。

では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
箇所を引用しておきます。

本書に綴られた考え方を知り、自分は
どう考え、どう行動に活すのかを、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。

【引用5選】

❶戦わないことも戦略のうち

戦うか否かを決めるまでは徹底的に情報
重視、戦いに入ったら臨機応変を重視、
これが「孫子」のテーゼなのだ。

❷戦争の本質

すべてのものには、それをそれたらしめて
いる本質があり、それさえ掴めれば残りの
すべてを押さえられる。

現実の戦争というのは、その本質をより
具現化した度合いで、おのおのの特徴が
決まる。

❸クラウゼヴィッツ「三位一体」の概念

戦争はまた、その全体像から見て、戦争に
おける支配的傾向に関して独特の三位一体
を成している。

つまり1つ目には盲目的な本能と見なされ
るような憎悪や敬意を伴う本来の暴力的行
為。

二つ目には戦争は確かさと偶然性の賭けで
あり、この性質が戦争を自由な精神活動に
していること。

三つ目には戦争が単純に知性に属する政治
のための手段であるという従属的性質であ
る。(「戦争論」第一篇第一章二十八)

❹知は力なり

およそ戦いは、正を以て合し、奇を以って
勝つ

敵と対峙するときは、「正」すなわち正攻
法を採用し、敵を破るときには、
「奇」すなわち奇策を採用する。

❺決断と勇気の要件

鋼のような意思が摩擦を除去し、諸々の
障害を粉砕する。
(「戦争論」第一篇第七章)

精神が予期せぬものとの不断の闘いに幸運
耐え得るには、その精神には二つの特性が
不可欠になる。

一つはますます濃くなる暗闇の中にあって
も、内側の光明を燃やし続け、真実を照ら
すことのできる知性である。

また、もう一つは、このかすかな光に従っ
て行動する勇気である。
(「戦争論」第一篇第三章)

スポンサーリンク

本書に私淑して私が思うこと

『およそ戦いは、正を以て合し、奇を以て
勝つ』(「孫子」(兵勢篇)

これは、私が随分以前から、深く心に置い
ている言葉の一つです。

本来の意味は、本ブログの前章にも
記しましたが、著者は以下のように
記しています。

敵と対峙するときは、「正」すなわち正攻
法を採用し、敵を破るときには、
「奇」すなわち奇策を採用する。

私は、以下のように理解をし、
自分の行動指針としています。

交渉事であれば、事前に十分な調査と思案
(予測される問題の予防と発生時の対策を
考える)により、準備を万全に行う。

そして、交渉の場に臨み、状況を把握した
うえで、事前に準備した内容に相手の立場
と価値観を加え、最善の方法を提案し、
解決地点に着地させる。

時には、通常策と異なる手段に出ることも
あります。

それが結果として、奇を衒うことになる
場合もあるという考え方(指針)です。

今回本書に私淑して、その考え方をさらに
深めて自分にとって最善の取り組み方を
考えるよい機会になりました。

そして、「孫子」と「戦争論」の戦略的な
発想が重要な点で対立していることを知る
ことができ、大変勉強になりました。

戦略は、立場と環境によって内容は変わる
ものであり、そのことを前提に、考えを
進める必要があることを理解できました。

やり直しが利かないとする「孫子」と
やり直しが利くとする「戦争論」の
異なり。

これこそが、斯界の古典二書の
決定的な違いといえるでしょう。

「孫子」の以下の言葉は、強く印象に
残ります。

『亡国は以ってまた存すべからず、
死者は以ってまた生くべからず。
(火攻篇)』

スポンサーリンク

まとめ(「古典の叡智」)

今回は、『孫子・戦略・クラウゼヴィッ
ツ』(守屋淳)
についてお伝えしました。

『現状とは何か。そこで有効な問題設定
とは何か、これを掘り下げることで、
「戦略の要不要」「使うべき戦略」とは
何かがはじめて見えてくる。』

これは、本書の最終章に著者が記している
言葉です。

古典の叡智を活かすための考え方と行動の
仕方を著者は最後に示してくれています。

兵法書を現代のビジネスと生活に如何に
活かすべきか、これは、兵法書を深く読み
深く考えることで理解できるものであると
思います。

著者のこの最後の言葉は、その支えと
なってくれているように思います。

ぜひ、古典の叡智を活かすべく、
碩学を進めて頂きたい、
そのように願っています。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

コメント

タイトルとURLをコピーしました