脱成長コミュニズムで脱炭素&エネルギー問題を解決する『人新世の資本論』

書評

脱成長コミュニズムが脱炭素とエネルギー
問題を解決できるのではないか?

本書『人新世の資本論』(斎藤幸平)
新聞で見かけた当時、直感でそのように
思ったのです。

直ぐに購入し少し頁を捲ってみると、
こんな言葉が目に止まりました。

マルクスが求めていたものは、
無限の経済成長ではなく、大地(=地球)
をコモンとして持続可能に管理すること
であった。」

そして、読み進めていくと、第7章には、
こんな記述があります。

強く印象に残りました。

「生産力を限りなく上げて人々が欲するな
らばいくらでも生産しようとする消費主義
を晩年のマルクスならば
はっきりと批判
しただろう。」

さらにこう続きます。

「現在のような消費主義とは手を切って、
人々の繁栄にとって、より必要なものの
生産へと切り替え、同時に、自己抑制を
していく。

これが「人新世」において必要な
コミュニズムなのだ。」

「人新世」の資本論、いかがですか?

脱炭素とエネルギー問題の解決策は、
「脱成長コミュニズム」であるとする
本書の検証をお勧めします。

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本書で学んだ素敵な言葉

生産の目的を商品としての「価値」の増大
ではなく、「使用価値」にして生産を社会
的な計画のもとに置くのだ。

これこそ、「脱成長」の基本的立場にほか
ならない。

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『脱炭素&エネルギー問題』の解決に最前線で取り組む方々へ

「脱炭素、エネルギー問題を解決するには
原発政策を進めるしか方法はない。」

こう強調する政治家や経済界の要人の記事
をよく目にします。

しかし、よく考えて頂きたいと思います。

解決策が、資本主義のもと経済成長を前提
条件にしたものになっています。

今根底に置かれているこの前提条件を除外
して、もっと多様性のある解決策を考える
必要があると強く思うのです。

本書は、晩年のマルクス思想をもとに、
気候危機の解決策として、「脱成長
コミュニズム」を展開しています。

なぜ、今「脱成長コミュニズム」が
必要であると考えているのか?

まずは、その理由を知って欲しいと
思います。

そして、本書で説明されている
「脱成長コミュニズム」の具体的な解決策
を知って欲しいと思います。

そのうえで、原発推進派の方々には、
再度、考えて頂きたいと思います。

「新型原子炉」が期待されています。

しかし、新しい故に充分なリスク分析が
なされているとはいえないのが現状です。

脱炭素&エネルギー問題の解決策の前提
は、地球環境、人々の幸福を前提にして
考えるべきです。

晩年のマルクス思想で語られているよう
「価値」ではなく、「使用価値」を、
重要視して欲しいと強く願います。

よろしければ参考として、私の書評
「日本を守る危機管理投資&成長投資
『美しく、強く、成長する国へ』」

もご覧ください。

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脱成長コミュニズムこそが環境危機の解決策であるとする著者の考え方

本書の「はじめに」にある著者の言葉が
大変印象的です。

「政府や企業がSDGsの行動指針を
いくつかなぞったところで、
気候変動は止められないのだ。」

「目下の危機から目を背けさせる効果
しかない。」

「かつて、マルクスは、資本主義の辛い
現実が引き起こす苦悩を和らげる宗教を
大衆のアヘンだと批判した。」

「SDGsは、まさに
現代版大衆アヘンである。」

この連続した記述は、かなり極端な考え方
のように感じますが、しかし、冷静にこの
指摘を検証する必要があると思うのです。

著者は、本書において、「人新世」の定義
を次のように説明しています。

「人類の経済活動が地球に与えた影響が
あまりに大きい為、ノーベル化学賞受賞
者のパウル・クルッツェンは、地質学的
に見て、地球は新たな年代に突入したと
言い、それを「人新世ひとしんせい」と名付けた。

人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を
覆いつくした年代という意味である。」


そして、最後にこう結んでいます。

「人新世の『資本論』は、気候危機の時代
により良い社会を作り出す為の想像力を
解放してくれるだろう。」

著者が晩年のマルクス思想に注目した理由
を以下の記述から感じ取る事ができます。

「進歩史観の呪縛から逃れられなかった
マルクスの資本論を脱成長コミュニズム
という立場から読み直すことが必要なの
である。」

人類が経済活動を推し進めてきた結果、
地球が破壊される環境危機が迫っている。

資本主義の利潤追求を止めなければ
ならない。

その解決策は、著者が探し出した「晩期
マルクス思想の中に眠っていたのです。

「脱成長コミュニズム」に期待する著者の
描き出した世界をぜひ、まだ知らない多く
の人に知って頂きたいと願っています。

特に原発推進派の方々に。

では、本書でぜひ紹介したい教えを
少し引用しておきたいと思います。

【引用3選】

❶価値と使用価値の優先順

商品の「価値」とは、商品としての薬に
つく値段である。「使用価値」とは、薬
が病気を治す力のことで」ある。

資本主義においては、人の命を救うか
どうかよりも、儲かるかどうかが優先
される。

資本主義に決別して、「使用価値」を重視
する社会に移行しなければならない。

❷人新世の資本論

「晩年のエコロジー・共同体研究の意義
をしっかりと押さえることではじめて、
浮かび上がってくる資本論に秘められた
真の構想があるのだ。」

この構想は、5点にまとめられる。

使用価値経済への転換、労働時間の短縮、
画一的な分業の廃止、生産過程の民主化、
エッセンシャル・ワークの重視である。

経済成長が減速する分だけ、脱成長コミュ
ニズムは、持続可能な経済への移行を促進
するということだ。

無限に利潤を追求し続ける資本主義では、
自然の循環の速度に合わせた生産は不可能
なのだ。だから、「加速主義」ではなく、
「減速主義」こそが革命的なのだ。

❸歴史を終わらせないために

人類が環境危機を乗り切り、持続可能で
公正な社会を実現するための唯一の選択
肢が「脱成長コミュニズム」だというこ
とに、納得してもらえたのではないか。

「人新世」とは、資本主義が生み出した
人工物、つまり負荷や矛盾が地球を覆っ
た時代だと説明した。

ただ、資本主義が地球を壊しているとい
う意味では、今の時代を「人新世」では
なく、「資本新世」と呼ぶのが正しいの
かもしれない。

けれども、人々が力を合わせて連帯し、
資本の専制からこの地球という唯一の
故郷を守ることができたなら、その時
には、肯定的にその新しい時代を
「人新世」と呼べるようになるだろう。

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脱成長コミュニズムに期待する私の考えと行動

私は脱炭素やエネルギー問題の解決策とし
て『脱成長コミュニズム』を支持します。

そして、原発の再稼働や「新型原子炉」等
の新しい原発推進政策には反対です。

原発推進派は、脱炭素やエネルギーの問題
解決は、原発推進以外には考えられないと
しています。

「経済成長」を一番に考えたこの政策は、
間違っています。

前提条件に誤りがあるのです。

「価値」ではなく、「使用価値」を
重視すべきなのです。

自民党の原発推進派でつくる議員連盟
の稲田朋美会長は、次のように話して
います。

「政府が立ち上げたGX(グリーン・トラ
ンスフォーメーション)実行会議でもリプ
レース実現に向けた道筋の具体化に繋がる
ように、私たちの声を届けていきたい。」

原発を進めることが唯一の解決策では、
決してありません。

私は次のように考えています。

輸出企業を優遇することによる法人税、
そこに投資をする投資家からの所得税を
財源に考える今の財務省のシナリオ(推
定)を変えていく必要があります。

必要とされる以上に製品を作り、輸出する
仕組みから、その資金と労働力を基礎研究
への成長投資、高齢者の介護、雇用や若者
の教育支援サービスに移行すべきです。

それを実現できるのが、著者が晩期マルク
ス思想を研究し辿り着いた「脱成長コミュ
ニズム」だと思うのです。

「脱成長コミュニズム」を推し進めるため
には、一人ひとりが力を合わせて連帯する
必要があります。

まずは、本書を手にしてみることから、
始めて頂きたいのです。

「行動」しなければ、なにも変わることは
ないのですから。

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まとめ(脱成長コミュニズム)

今回は、『人新世の資本論』(斎藤幸平)
についてお伝えしました。

「気候変動の解決策は潤沢な脱成長経済」
とする著者の考えはとても理論的です。

原発推進派の動きを止めることにも
通じると理解をしています。

ひたすら「価値」を求めて、本来重視
すべき「使用価値」が軽視されている
現状を変える必要があります。

マルクスの資本論、晩年マルクスの思想を
研究し「脱成長コミュニズム」という気候
危機を解決するための方法に至った本書を
多くの人に知ってほしいのです。

そして、考えてみてほしいのです。

どうすれば、この地球とそこに暮らす
人々の幸福を守れるのかということを。

気候危機の解決策は、多面的な判断条件に
よって、正しく選択、あるいは策定されな
ければならないのです。

本書を読んで著者の考え方に共感される方
がひとりでも増えることを願っています。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 
代表取締役 大高英則

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