合意を目指す『武器としての交渉思考』

書評

恒産こうさんなければ恒心こうしんなし』

これは、本書『武器としての交渉思考』
(瀧本哲史)で紹介されている孟子の
言葉です。

『経済的な安定がなければ精神的にも
安心することはできない』

私は本書でこの言葉を知りましたが、
とても理に叶った言葉だと
心から感じています。

事業を始める理由は、
ひとそれぞれ。

理想を実現するために事業を始める、
あるいは、必要に迫られて独立する、
等々。

理由は別として、言えることは、
経済的に安定をしていなければ、
建設的、健康的に事は成せない、

孟子の言葉は、それをよく、
表わしていると思います。

では、どうすれば、経済的に安定して
事業を進めていけるのか。

その手だての一つが、本書に記されている
「交渉思考」だと思うのです。

実践的な交渉の考え方と技術です。

「具体的なメリット」を相手に与えること
そして、喜ばれること。

そうすればその先で契約行為が生まれる。

著者の伝える次の言葉には、
説得力があります。

『客が儲かれば、
お金はあとからついてくる』

私は、本書に私淑し、いくつかの大変
実践的な交渉技術を習得できました。

その効果を経験しました。

後ほど詳しくお伝えしますが、
バトナ、ゾーパ、アンカリング等、
机上論ではなく、現場で実践された、

この「確かな効果」を得られる交渉技術を
多くの方々に知って頂きたい、
特に経営者の方々には、

そのように思っています。

ぜひ、本書を読み進めて、ご自身の
交渉技術を深めて頂きたいと願って
います。

本書は以下の章で構成されています。

・なぜ、いま「交渉」について
学ぶ必要があるのか?

・大切なのはロマンとソロバン

・自分の立場ではなく、相手の「利害」
に焦点を当てる

・バトナは最強の武器

・アンカリングと譲歩を使いこなせ

・非合理的な人間とどう向き合うか

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本書で学んだ素敵な言葉

交渉は、断られてからが勝負

本書「武器としての交渉思考」より

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踏みとどまって合意を目指してほしい!

『相手と自分、お互いの利害を分析し、
調整することで合意を目指す交渉』

これは、本書『武器としての交渉思考』
の表紙裏に記されていた言葉です。

なにか、基本に立ち返ることができ、
新鮮に感じられました。

『交渉』を要するシーンは、様々です。

十分に合意を予測できる想定内の交渉、
全く合意の望みを感じられない困難な
交渉があります。

前者は独自の方法で交渉を進めても、
おそらくは大丈夫でしょう。

しかし、後者の場合は途方に暮れ、
交渉の前に立ち止まってしまう、

そんな経験をされたこと、
おありではないでしょうか。

勿論、私はあります。
しかも、「幾度も」です。

高い目標に挑む際、多くの取り組みに身を
置く場合には、そうした状況が訪れる可能
性は極めて高いと言えます。

では、どうすれば良いのか?

「事前に交渉の準備をすれば良い!」
そう、通常は考えると思います。

しかし、独自の経験と考え方では、
どうしても限界があります。

そこで、「交渉技術」を磨くために、
書籍を探し、学ぶ場所を探し、
誰かに相談をすることに。

しかし、なかなか、求める交渉技術を
習得できないのが現状だと思います。

私は、本書に私淑し、自分に合った交渉
技術を得ることができたと感じています。

それは、一言で言えば、この交渉思考が、
「自分の肌に合った」ということです。

これは、「交渉思考」に限らず、
「問題解決思考」やそのほかの思考に
ついても言えることだと思います。

私の中では、考え方が、
自分のそれまで進めてきた考え方と
「目指す先」が同じで、

その方法に、「新たな気付き」
感じられたからだと分析しています。

その確証の決め手は、「直観」です。

この「交渉思考」で進めていて、
違和感がないのです。

さらには、交渉が「苦」ではなく、難解の
紐がある法則に導かれて、自然に解かれて
いくように、心が「楽」に変わりました。

本書では、バトナ、ゾーパ、アンカリング
等々、いくつかの「交渉思考」の技術を
学ぶ必要があります。

しかし、その先に、実践的な「思考技術」
を得られるとしたら、今後の新たな取り組
みにも怯むことなく、挑めると思います。

お勧めの一冊です。

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具体的なメリットを与えることで合意を目指す著者の考え方

『合意を作り出す手段こそが、この本の
テーマである「交渉」になります。』

これは、本書「武器としての交渉思考」
の「ガイダンス」に記された言葉です。

「交渉」の本来の意味を示す、的確な
表現だと思います。

著者は、次のようにも言っています。

『交渉とは、けっして、単なるビジネス
スキルではないのです。』

実に、意味深く感じます。
得心が行きます。

さらに、著者の以下の言葉は、歴史的視点
から言い尽くした、心に深く残る表現だと
私の中では感じています。

『人間が何千年もかけて作り出してきた民
主主義の社会は、人々が交渉した結果であ
る「合意に基づいた契約」を行うことで、
秩序を生み出していく基本となります。

「交渉」、「合意」、「秩序」という
言葉の連鎖の重みと影響を感じます。

ここに「交渉思考」の意義があるのだと
感じています。

本書に私淑することで、合意を作り出す
手段が交渉であることの意味を深く、
理解することができました。

本気で世の中を動かす為には、物事の成
否は別として、現状ではエスタブリッシ
ュメント層(社会的な権威・権力を持つ
人々)の支援が必要であることも理解を
しました。

異質なものと結びつくことで、大きな
変化が生まれるという気づきを得ました。

バラバラで動くのではなく、組織化して
アクションを起こすべきであることの
効果を学ぶことができました。

では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
箇所を引用しておきます。

本書に綴られた考え方を知り、自分は
どう考え、どう行動に活すのかを、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。

【引用5選】

❶Client interest first,
money follows

客が儲かれば、お金はあとからついてくる

相手が儲からない商売は成り立たない。
「具体的なメリット」を提供することが
できれば、お金を払ってもらえる。

❷どれだけ相手の主張を聞けるかの勝負

相手が欲しがっているものは何か、
相手が妥協してもいいと思っているもの
はなにか、それらを正確に見極めて、
分析することが大切である。

❸バトナ
Best Alternative to a Negotiated
Agreement

相手の提案に合意する以外の選択肢の
中で、一番良いもの。

❹ゾーパ
Zone of Possible Agreement

合意が可能となる範囲

交渉において両者のバトナが決まれば、
その間にゾーパが生まれる。

❺アンカリング

錨ともいうべき「最初の提示条件」に
よって、交渉相手の認識をコントロール
すること。

交渉は、最初のアンカリングによって
決まる。(相手側が出した条件に意識が
捕らわれてしまうこと)

どんなに法外な条件でも、「提示されると
それを基準に考えてしまう。」という人間
の真理を上手く利用している。

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本書に私淑して私が思うこと

『合意を目指す考え方』

これは、人生を歩むうえで、必須の
スキルであると感じています。

今回、本書に私淑して思うことは、
一点、「もう少しの気づき」で、
交渉思考は正規の形に達する、です。

おそらくこれは、私だけではなく
多くの人がそうであると思うのです。

人生は、選択の連続であり、交渉の
連続でもあると思います。

自分の経験と考え方で、公的なこと、私的
なことに考えをめぐらす現状であるように
思うのです。

その結果、小さな交渉は問題なく進み、望
みの結果を手に入れ、大きな問題には、途
方に暮れ立ち止まってしまうことになる。

しかし、繰り返しになりますが、
それまでに得た経験と積み重ねてきた
考え方は、大きな交渉においても、
役立っています。

ただ、「もう一歩」、考えを深める必要が
あります。

そこで、自分に合った私淑、親炙が必要に
なってきます。

考え方の基本を学び、それまで気付かなか
った視点を知り、自分の中にある「核とな
る考え方」と照らし合わせる。

そして、「肌が合えば」その考え方を取り
入れ、自分の考え方に広がりを与えること
が大事だと思うのです。

自分の基本的な考え方、信念を「変える」
のではなく、「広げる」のです。

もう一度言います。
「変える」のではなく、「広げる」
のです。ここが、大事です。

その決め手は、「直観」です。

本書は、私が「交渉論」で悩む際に、
都度、解決のヒントを与えてくれます。

読み返す度に、見えていなかった
新たな視点が浮かび上がってきます。

それは、自分の成長の結果、視界が広がり
考え方が深まってきた故と感じています。

本書は、交渉というテーマを題材に、
自分を成長させてくれる書籍であると
感じさせてくれます。

困難な交渉の際には、繰り返し読み返して
みることをお勧めできる書籍であると、
お伝えできます。

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まとめ(「交渉思考」)

今回は、『武器としての交渉思考』
(瀧本哲史)についてお伝えしました。

『相手の立場(利害関係)を理解する。』

これは本書に記された内容です。

「交渉」とは、
まさにこの言葉につきると思います。

これまでもそう思ってきましたし、
本書に私淑して以降もその考え方は
変わることはありません。

しかし、本書に出会ったおかげで、この
考えを実践するための「交渉技術」は
確実に高まったといえます。

それは、本書によって、交渉の基本的な
考え方を実例を通して学べたからです。

最後にもうひとつ、交渉に大事なこと
として著者からのアドバイスをお
伝えします。

『具体的なメリットを提供する』

『利他の心』を加えて、交渉技術を
深めて頂ければと願っています。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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