不易流行論『芭蕉入門』

書評

不易の理を失わずして、流行の変にわたる

これは、本書『芭蕉入門』(井本農一)の
「不易流行論」の章に記された蕉門十哲
一人北枝による「山中問答」にある言葉
です。

実に、意味深い言葉に感じます。

私は、この「不易流行」という言葉が
とても好きです。

そして、生きるうえでの指針として、
いつも心に置いている言葉です。

本書では、不易流行について、
以下のように説明をしています。

『古今の俳諧のすぐれた作品にはある共通
の本質的なものがあります。

人が古人の優れた俳諧にも感心し、また
現在の優れた作品にも心打たれるのは、
そこに何らかの意味において共通した、
ある本質的なものを想定しているから
でしょう。それが、「不易」です。

しかし、個々の作品が優れた作品である
ためには、常に独創的でなければならな

いのは当然です。

時代とともに動き、新しみを求めなけれ
ばなりません。それが、「流行」の意味
でしょう。』

いかがでしょうか。

少し長い引用になりましたが、
「不易流行」という言葉について、
その本質を知るうえで、

ぜひ、何度も読み返してみて
頂きたいと思うのです。

のちほどお伝えしますが、
物創りを生業とする私にとっては、
この「不易流行」という言葉は、

生涯にわたり、心の支えとなって
くれるものと感じています。

ぜひ、みなさんも、「不易流行」を
意識して人生を楽しみながら歩んで
頂ければと、願っています。

本書は以下の章で構成されています。

・笈の小文の旅へ
・芭蕉の反省と更科紀行の旅
・奥の細道の旅
・歌枕探訪と不易流行
・楽しみの追求、等々

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本書で学んだ素敵な言葉

物を真に理解するには、己を空しくして
対象に全面的に沈潜し、埋没しなければ
ならない。

本書「奥の細道の旅」より

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不易流行から生まれる新たな価値を大事にしてほしい!

新たな企画がなかなか浮かばず、つい
新しいものばかりを追ってしまう。

あるいは、過去の成功体験に拘って
現状に適さない企画になってしまう。

こうした経験をお持ちの方、
いらっしゃると思います。

私はそうした時期を過ごしていました。

常に新しい技術や環境に興味を示すことは
とても大事です。

そして、過去に培った大切な経験や考え方
をいつまでも大事にしたい、そんな思いが
あることは、自然なことだと思います。

そんなふうに考え、考えが纏まらず、
悩んでいた頃に、芭蕉の「不易流行」
という言葉を知りました。

とても大事にしたい言葉に感じました。

変えることがあってはならない本質的に
大事なものがあり、その具体的表現は、
時代に従うことが望ましい。

そう「不易流行」という言葉を理解し、
それ以降、企画を考える際には
この言葉を意識するようになりました。

芭蕉が「奥の細道」の旅の中で
「風雅」を追い続けた時のように、

なにか新しいことに挑戦をする際には、
「不易流行」の真の意味を大事にして
挑んで頂ければと願っています。

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風雅を求め「奥の細道」を旅した芭蕉の考え方

『奥の細道という作品が、旅の情景を述べ
ることは従で、主点はいわば風雅の世界を
解き明かそうとしている。』

これは、本書「奥の細道の人間と自然」の
章に記された言葉です。

「風雅の世界」、実に意味深い言葉です。

芭蕉が追い求めた「風雅」。

辞書によれば、
俗でなく、みやびやかで趣があること。

以降、私の中では、常に目指すものの横に
この言葉をおいて考えながら歩んできた、
そのように、感じています。

芭蕉が描き、求めた「風雅」の感覚とは
いったいどのような高尚な知の営みで
あったのだろうか。

どこに惹かれるのかと言うと、
自らの足だけを頼りに、途方もなく
遠距離の、そして多くの旅をしながら、

身体で感じながら、「風雅」の入魂を
追い求めた点にあります。

著者は次のように、芭蕉の思いを
類推し綴っています。

その表現がとてもきれいな流れで構成
されていますので、引用しておきます。

芭蕉の「風雅」への拘りの萌芽を
感じ取って頂ければと思います。

『芭蕉は旅の事実を素材し、紀行という
文芸形式を借りて、自分が胸中に抱いて
いる風雅の理想図を描いて見せようとし
たのだと思います。

旅をする芭蕉という主人公の行いや振舞
を通して、風雅のさまざまの色相いろあいを示し
紀行全体として、このような旅をし、

このような生活をすることが、真に芸術
的な、従ってまたもっと高級な人間の
生き方であることを明らかにしようと
しています。』


忙しく流されていきがちな現代において
芭蕉が追い続けた「風雅」の思い。

そして、その根源を思わせる
「不易流行」という言葉。

ひとつの拘りを持って、追うべきものを
追うという考え方が私の中で育ってきた
ように感じています。

本書「芭蕉入門」は、読み手によって
感じ得るものは異なると思います。

また、読み重ねるたびに、
気づきと感覚の成長を期待できる、
そのように感じています。

ぜひ、幾度も、幾度も読み重ねて
芭蕉とあなたご自身を感じて頂きたい、
そう心から思える一冊です。

では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
箇所を引用しておきます。

本書に綴られた考え方を知り、自分は
どう考え、どう行動に活すのかを、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。

【引用5選】

❶更級日記の旅

芭蕉が有名になったのは、芭蕉が普通の
俳諧宗匠とは違うアウトサイダーで
あり世間通俗の体制のそとへ出た、
いわば脱体制の作家としてであります。

❷奥の細道の旅

物を真に理解するには、己を空しくして
対象に全面的に沈潜し、埋没しなければ
ならない。

こちらが胸を開いてまず相手と一体に
ならなければ駄目です。

❸歌枕探訪と不易流行論

絶対的なものは抽象的なものですから、
具体的な作品に表現されるときは、
それぞれの時代らしい現れ方、

それぞれの作者らしい現れ方をするもので
むしろ、もっともその時代らしい新しい
発想や表現、その作者としての独創的発想
や表現があって初めて、本質的なものが
表されると言えます。

つまり流行の中に不易が、本質的なものが
真にあらわれるという考え方です。

❹嵯峨日記と猿蓑

芸術的でない人間は真の人間ではない。

生活が風雅の中に埋没した時、その人は
初めて真の人間だと、芭蕉は主張したい
ようです。

❺終焉

所思
此の道や行く人なしに秋の暮れ

一筋の道がずっと続いている。秋の夕日が
まさに沈もうとし、鈍い光があたりの木々
の梢を赤く染めている。

だがもう地上には宵闇が漂い、道行く人は
一人もなく、あたりは寂然としている。

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本書に私淑して私が思うこと

不易流行という言葉がありますが、営業の
進め方も昔ながらの変わらぬ本質を大事に
し、時代と共に変えるべきものは変えてい
くことがとても大切だと感じています。

これは、私が営業研修の事業を進める上で
の基本的な考え方です。

この思いはこの事業を始めた時からなんと
なく心において気にかけていたものです。

本書に私淑することで、その思いが、
「不易流行」という言葉に同化され、
こうした表現に落ち着きました。

私の中では、大事にしている考え方の
ひとつとして、いつも頭の中に重要な
位置を占めています。

営業を進めるうえでの「不易」は、人の
「確かな心の動き」を大事にするという
ことです。

具体的には、以下の3つの段階です。
各々に関して、確かな心の動きを確認
できたら次の段階に進むことが前提に
なります。

最初に悩みの解決、あるいは、本人が、
まだ気付いていない未来の提案を伝えて
見込客を集める。

次に、しっかりと価値提供を行い、信頼
を得て良質の相談を生み出す。

そのためには、専門性と人間性を上手に
伝える必要があります。

最後に早期契約を実現して契約効率を
高めるというものです。

そして、「流行」は上記の「確かな心の動
き」を実現する具体的な手段を構築する際
に必要なものです。

今で言えば、SNS,あるいは、広告ツール
が該当します

私は、営業と言う行為に関しても、
「不易流行」は、とても大きなポジション
を占めていると考えています。

多くの人に本書を読んで頂き、芭蕉が生涯
を賭けて追い続けたであろう2つの言葉、
不易流行と風雅を、

自分であればどう解釈し、
どう行動に移すか、
じっくり考えて頂ければと願っています。

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まとめ(「不易流行」)

今回は、『芭蕉入門』(井本農一
についてお伝えしました。

『松尾芭蕉はひたすら俳諧の道を追求
した人だった。』

これは、本書裏面に記された著者の
芭蕉に対する純粋な思いなのだろう
と推測できます。

ひとつのことを追求し続けるには、
信念が必要だと思います。

その信念は、おそらくは、幾つかの
言葉に支えられていることでしょう。

繰り返しになりますが、芭蕉は、
不易流行と風雅というこの2つの言葉に
託されている真の意味を身体を使って
追い続けたのだろうと思います。

私は、多くの人と多くの言葉に支えられて
事業を進めています。

こうした環境にあることに、
ただただ、感謝、感謝です。

後者については、私淑と親炙によることが
多いのです。

言葉は、思考を深めてくれます。

ぜひ、本書に私淑し、同時に今進めている
事業、あるいは、プロジェクト等に、
「不易流行」の考えを同化してみて
頂ければと思います。

きっと、新たな気づきを得ることが
できると思います。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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