『生命の最大のミッションは、とにかく
生き残ること、そして、個体として生き
残り、種が繁栄するという原則。』
生命の起源に強い興味を頂き始めた頃に
本書「生命科学的思考」(高橋祥子)に
出会いました。
なんとも言い難いほどに、私の最も深め
たいと考えていた知識と考察が網羅され
ているように感じました。
私は、「思考」と「想像」について、
碩学を続けてきました。
そして、「思考」と「感情」との関係性、
更に「行動」に与える影響を諒解するため
に多くの時間を費やしてきました。
自分なりに整理ができ始めた頃、書店で
偶然目にしたのが本書です。
著者は、本書で最も伝えたいこととして
次のように記しています。
『生命原則を客観的に理解した上で主観
を生かす思考法では、客観的な理解と
主観的な行動を重視している。』
これが、著者の語る「生命科学的思考」
の定義だと理解しています。
私が重視する生き方の根源である
「思考」と「行動」について、
とても良い影響を与えてくれました。
本書は、「思考」というテーマを生命科学
という専門分野から考えるプロセスを示し
てくれます。これまでに経験のない刺激と
なりました。
ぜひ、この新しい思考の取り組みを体感
されますことをお勧めします。
本書で学んだ素敵な言葉
生命の最大のミッションは、とにかく、
生き残ることです。
生存を脅かす危険を察知して、生存戦略上
優位に立つために、私たちは一見すると非
効率にも見える「負の感情」も持ち合わせ
ているのです。
迷ったときにこそ、行動を起こしてほしい
将来をどう描くのか、その為に何を選択し
あるいは、何を新たに作り出すのか。
なにかよくわからないが、浮かんでは
消えゆく混沌とした状態。
頭の中で思考が絶え間なく続いていく。
全く形にならず、ただただ
時間だけが確実に過ぎてゆく。
私の中では、こうした状態で過ごすことが
比較的多くあります。
頻度の違いはあるでしょうが、おそらく
多くの方がそうした経験を持たれている
ことと思います。
私は、考えが纏まらない時には、
大切にしている信念に基づき、
行動を起こします。
その中で、現状を把握し、そこから
解決策を構築していきます。
本書で紹介されている思考法は、
手法は異なりますが、類似する点が
非常に多くあるように思います。
それ故に親しみをもって、
客観的に理解し、主観的に行動する
「生命科学的思考」を学べました。
問題を解決するためには、多くの思考法を
知っておくことが望ましく、その中で自分
の肌感にあったものを選ぶと良いです。
「生命科学的思考」は、その中のひとつに
相応しい思考法であると実感して頂ける
ことと思います。お勧めです。
思考が人類にとって唯一の希望であると定義する著者の考え方
『思考というのは、生物学的には多くの
エネルギーを消費する行為です。
しかし、思考という非効率的な行為こそが
人類にとって唯一の希望であると、
私は考えています。』
本書「生命科学的思考」(高橋祥子)の
表紙を捲ると、この刺激的な言葉が目に
飛び込んできます。
「思考」が人類にとって唯一の希望。
この言葉が発するメッセージ、
その真意をを求めて、私の新しい
「せきがくの旅」が始まりました。
『生命の原則に抗って生きる』
著者がこの言葉に託した本質的な「意味」
を知るために、頁を捲り続けることになり
ました。
そして、著者が最も伝えたいという
この言葉に辿り着きました。
『生命の原理や原則を客観的に理解した上
で、それに抗うために主観的な意志を活か
して行動できる。』
私は、この考え方を心から支持します。
「客観的に理解し、主観的に行動する」
ことは、具体的な手段は異なるでしょう
が考え方は私の思いと一致しています。
更に、著者の思いは、こう続きます。
『生命原則を受容した上で、主体的に思考
して学習し前に進み続けることで、次々と
現れる課題を解決できるはずです。』
課題解決に向けて、大変頼もしい
考え方です。
ぜひ、多くの方々にこの生命科学的思考の
本質を理解して頂き、日々の問題解決に役
立てて頂ければと願っています。
では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
断章を数点引用しておきます。
【引用5選】
❶非効率な感情を抱えて生きる
感情を持つことが、生命としての生存戦略
上有利だと考えられている。
感情は、生きていく上での危険を察知し、
その危険から離れたり排除したりするため
に必要な機能として存在します。
何に対して不安や怒りを覚えているのかと
客観的に分析できるようになると、解決策
が見えてきます。
❷生命には複数の時間軸が組み込まれて
いる
DNAは長期間にわたって変わらず、RNA
は環境に応じて量が変化する。同じ生命
の中に複数ある時間軸の仕組みを持つこ
とで、長期的な変化にも短期的な変化に
も対応することができます。
この関係は、企業における経営理念と
戦略の関係と似ているように思います。
判断に迷ったときには、一旦長期的視点に
立ち、自分たちが今どの位置にいるのかを
俯瞰した上で、直近にどのような戦略を取
るべきかという短期的視野に立ち戻り議論
すれば、やるべきことが見えてきます。
❸主観を持つ人間は創造主に歯向かえる
人間は、主観的な意志を活かして行動でき
る数少ない生物です。そこに希望があると
私は信じています。
私たちは基本的に遺伝子に従った生命活動
を無意識に実行していますが、自由意志が
存在すると考えることで、実際の行動自体
が変わる余地が生じます。
生命原則に歯向かう意思が存在すると思う
ことそのものが、遺伝子に歯向かう力にな
るということです。
❹主観的な感情と客観的な情報のどちらを
優先し生きるべきか
科学リテラシーを高め科学的人間として
知性を持って対象を捉え、それでもなお
生物的人間として感情を持って行動を起
こすことは自分にとっての幸福に繋がり
ます。
さらに言えば、そうして科学的知識を積み
上げていくことは、人類全体の幸福な未来
にもつながると私は信じています。
❺情熱は後天的に獲得可能である
情熱があるから行動が起こるのではなく、
行動するから情熱が湧いてくるものだと
私は考えています。
脳の中でやる気に関係する淡蒼球という
場所は、体を動かすことで活性化すると
いう研究成果があります。
まずは、動き出すことで自然と情熱が
湧いてくると理解できます。
「生命科学的思考」に対する私の思い
私の「思考と行動」の原点は、
「正しく生きる」ことです。
それは、あらゆることの判断をする際の
基本となる考え方であり、「信念」です。
本書「生命科学的思考」を読み終えた時
に、得心したことがあります。
それは、私が「信念」に基づいて行動して
きたと思っていたことは、実は表層での認
識であり、
その深層部分では生命の原理や原則に抗っ
て主観的に行動していたということです。
遺伝子によって引き継がれた生き方の原則
や行動原理に支えられ、そこにいくつかの
独自性の色を添えて個性として成り立って
いるのだと感じたのです。
私は、「利他の心」をとても大事なものだ
と思っています。幼いころから、父の姿を
見てそう思い生きてきたように思います。
本書では、その「利他の心」について、
著者の考えがこう述べられています。
『利己と利他は対立しない』
それは、「利他の心」について、
考えが深まる内容でした。
ぜひ、第二章の89頁を開いてみて
頂ければと思います。
新たな認識を得ることができ、より自分を
成長させてくれる考え方が待っていること
と思います。
まとめ(「人類の希望」)
今回は、『生命科学的思考』(高橋祥子)
について、お伝えしました。
『生命の原理原則を客観的に理解した上
で、それに抗うために主観的な意志を活
かして行動できる。』
これは、著者が本書で繰り返し述べる
もっとも伝えたい内容です。
そして、本書を読み終えると、
「生命の原則に抗って生きる」という意味
を理解できるはずです。
多くの課題を解決していくためには、
「行動」が必要です。
しかし、前提として、
客観的に生命の原則を理解することが
大切であるということなのです。
なぜなら、解決の糸口を見つけやすく
なるからです。
「生命科学的思考」は、遺伝子に関する
内容もあり、少し難しく感じるかもしれ
ませんが、問題解決には大変役立ちます。
ぜひ、手元におく書籍のひとつに加えて
頂ければと思います。
ボアソルチ。
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
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