座右の書『菜根譚(洪自誠)』

書評

『人を信ずる者は、人未だ必ずしも尽くは
誠ならざるも、己は則ち独り誠なり。』

これは、『菜根譚』(湯浅邦弘)の
第3章に記されている言葉です。

人を信用する者は、相手がすべて誠実で
あるとは限らないが、少なくとも自分
だけは誠実であるといえる。

実に得心の行く意訳である。

人を信用するというのは、ある基準を達成
していることが前提になる故、その基準の
設定を含めて非常に難しいものである。

信頼するとなると無条件に認めること故に
さらにハードルは高くなる。

いづれにしても、判断の心は誠実である
必要があるが、これもまた厳しさを伴う。

相手の真意は測りづらいところがあるが
自分自身のことはわかる。常に誠実さを
心がけているのであれば、それが真実。

人を信用することは、儒家思想の基本
であり教育の原点であると著者は諭す。

本書は、仏教、儒教、道教が融合された
教えの為、広い心で処世をおくる術を
学べる非常に尊い書といえます。

人生において一読の価値は十分にあると
感じています。

本書は、4章から構成されています。

・菜根譚と洪自誠
・菜根譚を読む
・菜根譚の言葉
・処世訓の歴史

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本書で学んだ素敵な言葉

風安らかになみみ静かなる中に人生を見、
味淡く声しずかなる処に心体の本然ほんぜんる。

(本書「第3章」より)

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身を処する世知と人生を味わう心得を遇する著者の考え

『一時的な不遇をかこっても、権勢に
おもねってはならない。』

これは、本書「第二章」に記された著者
の言葉です。

実に、意味深い言葉です。
更につけ添えてこう記しています。

『偶か不遇かは、必ずしも自分の力だ
けで決まるものではない。いくばくか
の偶然が関与している。』

しっかりと心に留め置きたい言葉です。

それでは、本書の中で私が特に興味を
惹かれた箇所を引用しておきます。

本書に綴られた考え方を知り、
自分はどう考えどう行動に活すのか、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。

【引用5選】

❶上善は水のごとし。水は善く万物を
利して而も争わず。衆人のに悪む所
に処る。故に道にちかし。(老子)

❷人の心が最高の真実の境地に至ると
夏に霜を降らせることができ、城を陥落
させることもでき、金属や石を貫き通す
こともできる。

❸気は空虚でありどんなものにでも対応
できる。真実の道はただこの虚に宿る。
この虚なる状態を心斎という。

❹人の過ちは許すのが良い。だが自分の
過ちは許してはならない。

❺この世は気によって構成されている。
その気は陰と陽の二つ。それが様々に
組み合わさって天地・万物を構成し、
また宇宙の様々な現象を巻き起こすと
考えたのである。

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本書に私淑して私が思うこと

『書物を読んでも聖人賢者の心に出会うこと
がなければ、それは単なる鉛ざんの傭(文字
の奴隷)である。』

これは、本書の「第三章」に記された
「衣冠の盗」という菜根譚の言葉です。

記された思いは重く、
こう意訳されています。

『読書の目的とは、その中に記されている
古の聖人賢者の言葉を読み、その心に
触れることである。』

いかがでしょうか?

私にとっては、とても重要な
教えのひとつになっています。

私がこれまで碩学を続けてきた
想いの本質に通じるものを感じます。

古の聖人賢者の言葉を読むことの尊さ、
さらに、その心に触れるということの
難解さ故に、とても意味深く感じます。

私が読書を続けているのは、
ある考えによるものです。

それを記しておきます。

著者は、なぜそれをテーマとしたのか、
そのテーマについてどう考えたのか。

私は、そのテーマについて、
どう考え、どう実践行動に活かすか。

常に考え、考え続けることは、
とても大事なことだと感じています。

そして、考え抜いた先で、それを
行動に移すことで、読書の価値が
証明されるように思うのです。

本書は、多くの処世術を通して、
多くの事を学ぶことができます。

その中のテーマの1つ、読書の本質と
価値観について考えることができ、
有意義な時間を過ごせました。

多くの方にお勧めしたい一冊です。

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まとめ(処世術)

「処世術」とは、社会生活を円滑に営む
ための技術や知恵、巧みな世渡りの方法
を意味する言葉

(Search Labs | AI による概要)

「処世術」に関する書籍がたくさんある
中で、本書は、とても心に響く内容が
多く記されています。

儒教、仏教、道教が融合されている故
その価値が増しているように思います。

本書の1つ、ひとつの教えを自分の
人生と考え方に照らし合わせてみる
ことで、さらなる飛躍に通ずると
感じています。

まずは、一つのエッセンスをとりあげて
耽読し、自分の生き方と照合する。

そこに差異があるとしたら、正しさを
精査し、改めるべきは改め、維持すべき
は維持し、ひとつ上のステージへ。

本書は、人生を歩み続けるための
勇気と力を与えてくれる一冊になると
感じています。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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