◉PSA検査(正常値0~4ng/mL)を早めに!前立腺癌は早期発見で根治可能です。私はPSA値310でした。グリソンスコア8、前立腺癌、リンパ節と骨に転移し、ステージⅣ(5年生存率30~50%)、根治はなくなり共生の道を探っています。
第30話 末期がん148日目の気づき――絶望ではなく“学びたい”が心を満たした
前立腺癌の告知を受けて、今日で148日が経ちました。
あの日からの時間は、ただ「余命と向き合う日々」ではなく、「生き方を選び直す時間」だったように思います。
告知のひと月前、背中に突き刺さるような激痛に襲われ、夜も横になることができませんでした。CT検査、MRI、生検……その過程で前立腺癌である可能性は理解していました。しかし、わかっていたつもりでも、本当にその瞬間を迎えると、冷静でいられる自信はありませんでした。
そして正式な告知の日。医師は静かに、しかし迷いなく告げました。
「癌は前立腺からリンパ節、骨にも転移しています。手術による根治は難しい。治すというより、共に生きることを考える段階です」
つまり、ステージ4。末期がん。五年生存率は、30~60%。
■ 絶望ではなく、湧き上がった“学びたい”という感情
「末期がん」。その言葉の響きは重く、暗く、人生の終わりを突きつけるようです。
聞いた瞬間、何もできなくなると思っていました。泣き崩れるかもしれない、声が出なくなるかもしれない。そんなイメージを勝手に抱いていました。
しかし実際には、違いました。
心の底から湧き上がってきた感情は――
学びたい。本を読みたい。考えたい。そして、行動したい。
不思議でした。なぜこのタイミングで「学び」なのか。
でも、胸の内ははっきりしていました。
「時間は有限だ。ならば、考え、学び、残された時間で何かを生み出したい」と。
■ 死は観念、生は創造――三木清の言葉との出会い
そんな時、三木清の『人生論ノート』に書かれていた言葉を思い出しました。
「死は観念である。生は創造である。」
死は、避けられません。誰にでも平等に訪れます。
癌であろうとなかろうと、人は必ず死にます。ただ、私の場合はその時期が少し早く知らされた、というだけです。
つまり、死はすでに確定している。
では、生とは何か――それは創造である。自分で選び、つくり、誰かの役に立つものを生み出す営みだと。
そう考えると、怖さよりも「今やれることをやろう」という思いが湧き上がってきました。
「絶望している時間は、もうないのだ」と。
■ 私が残された時間でやるべき3つのこと
末期がんの告知を受けたとき、人は何を思うのか。
きっと人それぞれです。泣く人もいる。怒る人もいる。受け止められない人だっている。
私は、「共生する道を探そう」と決めました。
できるだけ長く生きるために。そして、残された時間で、どうしてもやりたいことが3つあったからです。
① 来店前の静かな失注を防ぐ「集客ゲート」を全国30社へ届ける
工務店経営者の仲間たちと共に取り組んでいる仕組みです。
InstagramやYouTubeの再生数は伸びているのに、来店や契約につながらない。そんな“静かな失注”を防ぐための方法を形にしました。これを30社へ届けたい。それが第一の目標です。
② 書評・論考ブログ「せきがくの旅」の収益化
本を読むこと、考えること、それを言葉にして残すことが、今の私の生きる力です。どうせ死ぬなら、読んでくれた人の人生の役に立つ文章を残したい。このブログを収益化し、継続可能な形にしたい。
③ 合理的思考を、次の世代へ伝えること
子どもたちや若いビジネスマンに「問題の見つけ方」「限られた条件で解決策を考える力」を伝えたい。私にとって合理的思考は“心の保険”でした。だからこそ、残された時間で伝えておきたいのです。
■ もし叶うなら、こんな願いもある
これは“使命”ではなく、“願い”です。叶わなくても誰も困らない。でも、生きているうちにできたら…と願っていることがあります。
・ファイナル東京トレンドセミナーの開催
・学生時代を過ごした北海道への旅
・ライン川をゆっくり下る船旅
・エジプト・カイロ、ルクソール、ナイル川の古代遺跡を訪れること
・そして――6歳の孫が、甲子園に立つ姿を見ること
夢は、叶うかどうかよりも「抱いていること」が生きる力になるのだと知りました。
■ 今、私がやっている毎日の習慣
治療は現在、ホルモン療法の段階にあります。PSA値は下がり、背中の痛みもかなり和らぎました。しかし、ここから抗がん剤治療に入れば、体への負担や痛みが再び強くなるでしょう。だからこそ、今のうちに「体」と「心」を整えています。
毎日の習慣を記録しておきます。
・早朝に起きて、朝食前に読書と考える時間をつくる
・緑茶、トマトジュース、牛乳、アーモンド&小魚、そしてコーヒー
・禁酒・禁煙
・散歩と、独自に続けている12のトレーニング動作
・一日の終わりに、その日感じたことをノートに書く
これらは病気と戦うルールではなく、“生きる姿勢”そのものです。
■ 痛み・恐怖・そして希望
抗がん剤の時期が来れば、再び痛みと向き合う日々になるでしょう。
眠れない夜もあるかもしれません。心が折れそうになる日もあるはずです。
でも、その過程を含めて、私は記録し続けたいと思っています。
「治療の経過」「感情の揺れ」「どう乗り越えようとしているか」――これらを文章として残すことは、未来の自分のためでもあり、どこかで同じ痛みと戦っている誰かのためでもあります。
■ あなたに問いかけたいこと
もし、あなたが医師から「残された時間」を告げられたら、最初に何を思いますか?
何もできなくなるでしょうか。涙が止まらないでしょうか。それとも、私と同じように「今やるべきことは何か」と考えるでしょうか。
大切なのは、**「死を知ったから生き方が決まった」のではなく、「生きたい理由があるから、今を選び直した」**ということです。
■ 最後に
死は確定しています。しかし、生きるかどうか、生き方を選ぶかどうかは、自分次第です。
148日間の記録は、まだ途中です。これから治療の本番が始まります。痛みも、迷いも、不安も増えるでしょう。それでも、私は本を開き、言葉を書き、考え続けたいと思います。
生きるとは、創造することだからです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
書籍「人生論ノート」(三木清)
ボアソルチ


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