『本当のプラス思考とは、絶望の底の底で
光を見た人間の全身での驚きである。』
これは、本書『大河の一滴』(五木寛之)
の第一章に記されている言葉です。
深く考えさせられる重い言葉である。
その底の底に居合わせた人間でしか、
その深い意味合いは理解できない、
そう感じます。
著者の言葉は、続きます。
『そして、そこへ達するには、
マイナス思考の極限まで降りて
いくことしか出発点はない。』
私もこれまでの長い人生において、
多くの困難に向き合ってきましたが、
底の底という環境を知る身ではない、
そこまでのマイナス思考に陥っている
とはいえない、そう認識しています。
「底の底」という表現は、これまで
触れたことがないのですが、なにか
とても大きな困難を感じます。
著者のこの言葉に共感を覚えながら、
私の「せきがくの旅」は始まりました。
本書は、五つの章で構成されています。
ご自身の歩まれてきた過去と経験を思い
ながら読み進めて頂ければと思います。
・人はみな大河の一滴
・滄浪の水が濁るとき
・反常識のすすめ
・ラジオ深夜一夜物語
・応仁の乱からのメッセージ
本書で学んだ素敵な言葉
この世には、「真実」もあれば、
「虚仮」もある、それが本当だと
思っている。
(本書「2章」より)
人間を謙虚に見据える著者の考え方
人は大河の一滴。
それは小さな一滴の水の粒にすぎないが、
大きな水の流れをかたちづくる一滴であり
永遠の時間に向かって動いているリズムの
一部なのだと、川の水を眺めながら私には
ごく自然にそう感じられるのだった。
これは本書に記された著者の言葉です。
連綿と続く人の価値観の雫、粒の絶え間の
ない連鎖、その力強さ、頼もしさ、それは
絶え間なく前に、先に進みゆく力。
著者は、その思いの深さを
次のように記しています。
私たちはそれぞれの一生という水滴の旅を
終えて、やがては海に還る。
他力によって生老病死を人は生き、
そこにもたらされる慈悲をありがたく
頂戴するしかない。
著者の宗教観の根幹なのだなぁ~、と
そのように感じます。
それでは、本書の中で私が特に興味を
惹かれた箇所を引用しておきます。
◉本書に綴られた考え方を知り、
自分はどう考えどう行動に活すのか、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。
【引用5選】
❶人はおかれた状況や立場、そのときの
他者との関係のなかで、あるときは善意を
あるときは悪意を露出させる不確かで
あやうい存在なのではあるまいか。
❷全宇宙でただひとり、だれとも同じでは
ない唯一無二の自己であるからこそ、この
自分の存在は尊いのだ。
❸生きた、ということに人間は値打ちが
ある。どのように生きたかということも
大切だけど、それは二番目、三番目に考
えればよい。生きているだけで人間は大
きなことを成し遂げているのだ。
❹あれもこれも、と抱え込んで生じる混沌
を認め、もう少しいいかげんになることに
よって、たおやかな融通無碍の境地をつく
ることが、枯れかけた生命力をいきいきと
復活させることになるのではないか。
❺少なくとも戦争の時代、生命の危機とい
うものが目に見えて存在した。そのことで
もってみんな、自分が生きているという
実感があった。このことだけは確実だと
思うのです。
本書に私淑して私が思うこと
いろいろなものを受け入れて、たくさんの
ものを好きになったほうが人生、楽しいの
ではないか。
善悪、苦楽、生死、さまざまな対極する
ものの狭間で、振り子のように揺れなが
ら、スイングしながら、一時いっときの
命を輝かせながら生きていたい、、最近
はことに強く思うようになりました。
これは、本書「4章」で紹介されている
著者の言葉です。
『一時いっときの命を輝かせながら
生きていたい』
この言葉は、私がこれまで心の奥で
「意志」として、強くもってきたもの
なのです。
著者の抱くイメージに目を通してみて
私もそう思う!、という箇所は、
いくつもありました。
私の考えとしては、ものごとは白黒では
ない、その間に位置するものは確実に存在
する。
そして決して「二分の判断」はすべきで
ないこと等々、共感できることが多かっ
た印象です。
『たくさんのものを好きになったほうが
良い』という思い、それも私の思いと
同じなのです。
本書は、真の勇気と生きる希望を与えて
くれる「人生の友」といえます。
ぜひ、手に取って、じっくりと
読み進めて頂ければと思います。
まとめ(希望)
「大河の一滴」とは、何と美しい響き
だろう。詩の結晶のようである。
これは、本書「解説」に記された言葉
です。
大河の一滴、この言葉に秘められた意味を
知りたくて読み進めた本書です。
その答えは、冒頭の言葉にあったと
感じています。
とにかく美しい響きです。
その深い意味は、言葉にせずとも、
感ずるままに、心に感じていればよいと
今は、そう感じています。
感じ方、想い方、解釈の仕方は、
人それぞれ、経験によって異なる、
それが自然な捉え方だと
理解できたように思います。
ぜひ、本書は、繰り返し読んで頂けれ
ばと思います。きっと「生きる希望」
を与えてくれるはずです。
ボアソルチ。
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
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