『時空間は曲がる』これが一般相対性理論
を支えているきわめて単純な着想である。
これは、本書『すごい物理学講義』
(カルロ・ロヴェッリ)の第3章に
記されている言葉です。
実に明解、かつ興味深い言葉です。
著者の説明は、続きます。
『私たちが生きている世界は、三次元で
ある。時間を加えれば四次元になる。
四次元の空間が曲がるのを想像するのは
きわめて難しい。なぜなら、私たちの
感覚は、より次元の多い空間を直観的に
とらえることができないから。』
なるほど。しかし、難解である。
物理学の記事に触れると、
興味がどんどん深まり、疑問が湧き、
そして、探求心は止まらなくなる。
少し新しい知識を得ると、さらに
新たな疑問が生まれてくる。
138億年前にビッグバンが発生し、
この宇宙が生まれ、広がり続けている。
ビッグバンの前はどうだったのか?
調べてみると、超急膨張があったという
インフレーション理論に辿り着く。
では、インフレーションの前は?
こうした疑問や興味はつきない。
しかし、専門知識がない故に、
いつのまにか思考は停止し、
いつもの生活に戻っていく。
本書は、難解な物理の世界をわかりやすく
解説し、今わかっていることと、わかって
いないことを整理してくれます。
相対性理論、量子重力理論、ループ理論、
等々、なんとなく言葉だけは知っている
こうした理論の本質を知ることで、創造
の意慾と喜びは増していきます。
本書に出会い、こうした思いに誘われ、
私の「せきがくの旅」は始まりました。
本書は、4つの章で構成されています。
・起源
・革命の始まり
・量子的な空間と相関的な時間
・空間と時間を越えて
本書で学んだ素敵な言葉
知に本質的に備わっている不確かさを受け
入れるなら、無知に浸って生きることを
受け入れなければならない。
(本書「第4部 神秘」より)
宇宙の神秘に迫る著者の考え
『科学に確固たる信頼を与えているのは、
わたしたちの無知の自覚である。』
これは、本書「第4部神秘」に記された
著者の言葉です。
科学に対する「謙虚な心」、そのとても
重要な心の持ち方を感じます。
著者はさらに、こう続けています。
『わたしたちに必要なのは、
確実性ではなく、信頼性である。
真の確実性は、けっして
手の届かないところにある。
科学は、確実な解答ではなく、
もっとも信頼の置ける解答を
追求する営みである。』
本書は、この宇宙の多くの謎を解明する
ための現状と今後を示すとともに、科学
の本質について学びを与えてくれます。
デモクリトス、アリストテレス、
ガリレオ、ケプラー、ニュートン、
ファラデーから始まり、
アインシュタイン、ホーキング、
ビアンキ等々の科学者たちの功績。
量子場、重力場、ヒッグス粒子、
暗黒物質、暗黒エネルギー、等々、
謎は時が進むとともに増え続け、
謎はその過程で、徐々に溶解されて
いきます。
専門家でなくとも、一冊の良書と真剣に
向き合えば、無知を認識でき、不確かさ
に挑んでいけると信じています。
本書は、この思いを実感させてくれる
「価値ある書」の1つであると確信し
いつも手元においておきたい一冊です。
それでは、本書の中で私が特に興味を
惹かれた箇所を引用しておきます。
◉本書に綴られた考え方を知り、
自分はどう考えどう行動に活すのか、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。
【引用5選】
❶自然界で観察されるほとんどすべての
現象は、重力を除けば「たったひとつの」
力により支配されている。
その力を「電磁気力」と呼んでいる。
❷空間のいたるところに何らかの実態が
存在しており、電気や磁気を帯びた物体
から影響を受け、影響を与えている。
この実態は、今日では「場」と
呼ばれている。
❸空間のなかの粒子だけが、世界を構成
しているのではない。わたしたちが住ま
う世界は、空間の中で運動する場と粒子
によって形づくられている。
❹アインシュタインは計算を行い、質量
1グラムから得られるエネルギーの値を
割り出した。
その結果が有名な公式E=mc²である。
❺物質も空間も、時間さえもが「粒」で
あると考える「ループ論者」からすれば、
デモクリトスの思想は現代物理学の核心
まで到達していると解釈できる。
本書に私淑して私が思うこと
科学をとおして「自分の目に映る世界だけ
が世界ではない」ことを知る。
これは、本書「訳者あとがき」に記されて
いる言葉です。
実に、想像を掻き立てる一言です。
今、見えていると感じている景色は、
目から得た情報を脳内で映像として
組み立て、それを「姿」として認知
している状態だと理解をしています。
ということは、今自分が見ている景色は、
もしかしたら、隣で一緒に景色を見ている
人には、全く異なった映像として認知され
ているのかもしれません。
これは、私がずっと以前から抱いてきた
疑問です。
このようなことを考えているのは、自分
だけのような気がして誰にも話をしたこと
はありませんでした。
しかし、あるタイミングで懇意にしている
友人に、思い切って話してみました。
すると、その友人も同じことを考えていた
というのです。
そのタイミングは、本書です。
一冊の本から知識が深まり、そこから独自
の考えが深まり、そして、その考えを共有
でき、友情が深まっていく。
書物の素晴らしさをまた実感できたように
感じています。
自分と仲間を共に成長させてくれる書物は
とても貴重だとする考えは、益々、深まっ
ていきました。
お勧めの一冊です。
まとめ(神秘の宇宙観)
『知の限界をわきまえ、不確かさを
受け入れることが、科学的探究の
原動力になる。』
これは、本書「訳者あとがき」に
記されているとても印象に残る
言葉です。
「不確かさ」を追い求める。
このエネルギーによって、未知の探究が
実現されてきたのだと理解できます。
第4部「空間と時間を越えて」の第8章
「ビッグバンの先にあるもの」に、私の
探究心はどんどん引き込まれました。
本書は、長きに渡り抱えてきた疑問に
対して、わかっていることと、まだ
わかっていないこと、
その解決の予測を含めて、丁寧に、
かつ誠実に、最新の状況を示して
くれています。
ぜひ、本書と共に「せきがくの旅」を
はじめてみて頂ければと願っています。
ボアソルチ。
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
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