第12話:現実 静かな蓮池で、静かに現実と向き合う
明日はいよいよ、生検の結果がわかる。
おそらく、治療方針の相談や、追加の検査が必要になるだろう。
背中の激痛が治まり、ここ数日は現実から少し逃げるように穏やかな時間を過ごしてきた。
だが、やはり今置かれている状況を、冷静に、しっかりと受け止める必要がある。
おそらく明日、ステージ4と宣告されるだろう。
5年生存率30〜50%という現実を突きつけられるだろう。
そんな中、荒神谷遺跡公園の二千年ハスを見に行った。
来年また見られるかどうかわからない――そう思うと、無理をしてでも行っておきたかった。
一面に広がる蓮の花。
古代の空気がそこに漂っているような、不思議な空間だった。
ゆっくり歩く中で、体力の衰えを実感した。すべてを歩ききることはできなかった。
これまで毎年見てきた景色が、今年は違って見えた。
当たり前だと思っていたものが、かけがえのないものへと変わっていく。
そのことに気づかされた日でもあった。
おそらく、これからの自分の意識は、こうして少しずつ変わっていくのだろう。
来年、桜を見ることはできるだろうか――。
『閑吟集』に心を委ねてみるのもよいかもしれない。
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