学会の権威が明快に解き明かす『世界の名著』

書評

『世界の名著は、いわば、天を摩す巨木
の森である。』

本書「世界の名著」(河野健二編)
プロローグに記された言葉です。

この言葉の下地となっているであろう
意味の深さに惹かれました。

その巨木を一本一本伐りだす作業が、
とても価値ある事のように感じたのです。

本書では、近代の哲学、社会思想の分野
から45冊の名著が厳選されています。

サブタイトルは、「マキャベリからサル
トルまで」となっています。

目次を開くと興味をひく著書が並んで
います。

私がこれまで通読できた著書が、数は少な
いのですが、幾冊か確認できました。

マキャベリ「君主論」
デカルト「方法序説」
トルストイ「人生論」
フロイト「精神分析入門」
ケインズ「雇用・利子および貨幣の一般論」

時間が許されれば、全ての著書をじっくり
と読み込んでみたいところです。

本書では、
現代日本の知識人として
必読すべきポイントは何か、

解かれずに残されている
謎や批判されるべき点が何か、

この2点を解き明かすことが目的と
されています。

いずれじっくりと「天を摩す巨木の森」を
歩いてみたいと思っています。

その際に、最初に伐りだしたいのは、
以下の5冊です。

ロック「人間悟性論」
カント「純粋理性批判」
ニュートン「プリンキピア」
ヘーゲル「法の哲学」
ランケ「世界史」

皆さんも、ぜひ、巨木を伐りだして
みて頂ければと思います。

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本書で学んだ素敵な言葉

過去の名著が、目前の現在をこえて、
未来に繋がるのである。

名著が名著であるのは、それらの著者や著
作が、人間の社会や思想の奥深いところに
ある根源的なもの、本質的なものをとらえ
てそれらを明白に照らし出した点にある。

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新たな人生のステージに立つ際に読んで欲しい名著

『古典の新しさがよみがえるだろう。』

本書「プロローグ」に記されたこの言葉が
しばらくの間、頭の中を占有していた時期
があります。

どうしてもその言葉が意味する内容を
心から理解できないでいる自分がいる

そう感じていました。

幾つもの人生の岐路に立つ度に
本書と向き合ってきたのですが、
その中で、ある時実感しました。

「こういうことだったのか!」

と。

人生の大事な場面においては、
決断を要することが多いでしょう。

その際に、古典が優しく説いてくれます。

時代に合わせた新たな意味付けが、古典
から生まれてくるのです。

読者の解釈の仕方、感得の仕方によって、
古典の新しさがよみがえってくる、
新たな気づきを与えてくれる、

そう著者は伝えたかったのだと
理解をしています。

大きな判断をしなければならない時、
本書からその時々に相応しい著書を
一読してみることで考えを整理して
みるのも良いかと思います。

名著は、多くを語ってくれます。

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ふるいものの中にこそ真に新しいものがある、本書で示す著者の考え方

『本書はふるいものへの復帰を説こうと
するものではない。』

著者は、冒頭このように記しています。

1469年に生まれたマキャベリから、
1905年生まれのサルトルまでの名著を
集めていますので、

執筆の思いを異にされることを
予期しての一行なのだと思います。

その意図は、以下のように、
語られています。

『ふるいものの中にこそ真に新しいもの
があることの実例を示すことが、わたし
たちの意図であった。』

その説明として、以下の現象が示されて
います。

『一見、新しいジャーナリズムの話題が
じつは、ふるびた議論のくりかえしにす
ぎず、100年も前の評論がかえってきわ
めて新鮮な魅力をもつことがある。』

目まぐるしく変わる環境の中で、新しい
思想や考え方が突然発しられ、そして、
消えていく現代。

その中にあっても、名著が残した言葉を
目にすると、なにか心の奥深くに一枚、
一枚メッセージが折り重ねられていく

そう思えるのです。

著者は、既知のものである名著のどこに
新しいものを求めたら良いかという問い
かけに対して、こう記しています。

『名著が名著であるのは、それらの著者
や著作が、人間の社会や思想の奥深いと
ころにある根源的なもの、本質的なもの
をとらえてそれらを明白に照らし出した
点にある。だからこそ、それは現代の新
奇な話題をこえてなお魅力的なのだ。』


なぜ、名著の著者たちがそのような偉大
な仕事を成しえたのか、

著者は、以下のようにその考えを述べて
います。

『著者たちは、時代の転換期や思想の行き
づまりの状況のなかで、大胆に扉をひらき
新しい風を入れ、未来への展望をひとびと
のまえに示した。その任務のきびしさと、
そのなしとげた仕事の重さを切実にうけと
めること、そのなかから古典の新しさが、
よみがえるだろう。』

非常に深みのある解説であり、心から
原書と向き合ってみたくなります。

では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
名著を数点引用しておきます。

【引用5選】

❶ロック「人間悟性論」

悟性には一定の生得原理があるということ
すなわち、いくつかのはじめからの概念、
共通概念、いわば人間の心に刻みつけられ
た極印があって、精神ははじめて存在界に
入るときにこれを受け取ってこの世界にと
もなってくるということを、既成の見解と
しているひとびとがいる。

このような仮定は誤りである。

人間には悟性という「精神の最高の能力」
があり、この能力をはたらかせて真理に
近づくことこそ人間の喜びである。

❷カント「純粋理性批判」

自分の力では解決できないが拒否もできな
い問題に苦しむ、それが人間の理性の運命
だという、謎のようなプロローグではじま
る。

カントは、コペルニクス的転回に類比して
いる。

地上的人間精神のからくりにもとづいて、
天上的に気高い実在や原理をあらためて
見直そうとする原点の交換。

形式的論証から実験的方法への「考え方
の革命」。

❸ニュートン「プリンキピア」

これまでにわたしは、重力の諸性質の原因
を発見することはできなかった。しかもわ
たしは仮説をつくらない。

なぜなら現象から推論されえないものは
すべて仮説であり、仮説が実験哲学に入
る余地がないからである。

❹ヘーゲル「法の哲学」

理性的なものは現実的であり、また現実的
なものは理性的である。

「法の哲学」のなかで「法」というのは、
人間の本質と考えられる自由な意志が社会
のなかに実現する場合の具体的なあり方の
ことで、「法の哲学」とは、社会哲学のこ
とである。

❺ランケ「世界史」

あらゆる時代は、神に直接する。

過去の時代は、過去の時代として固有の
価値を持つ。過去の尊厳は、過去の人間
存在の尊厳のあかしでもある。

過去の諸時期は「一回的なもの」として
絶対であり、この意味で神に直接すると
いうのがかれの歴史に対する態度であり
その生涯をつらぬく生活信条でもあった。

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「世界の名著」に対する私の思い

私にとって「読書」とは、白紙のページに
著書から得た知識とそれに対する考察を綴
っていくことです。

価値創造と問題解決の2つの行動の源泉と
なる著書を求めています。

そして、それらに加えて疲れた心を癒して
くれる、いつも手元においておきたい著書
を探し求めています。

著者はなぜそれをテーマに選んだのか、
どう考えたのかをしっかりと読み込み
ます。

そのうえで、自分は、そのテーマについて
どう考えるのか、考察をしていきます。

読書の結果は、行動に結びつけることを
意識しています。

本書にマルクスの言葉が記されています。

『学問の険しい山道をよじ登るのに
疲労困憊を厭わないものだけが、
輝かしい絶頂を究める希望を持つ』

このマルクスの考えについて、
著者は、こんな感想を述べています。

『人間のなしえたギリギリの知的達成の
鋭さ、その精神的な内包性の広さを、
あらためて感得する必要があろう。」

私は、こう思うのです。

『生涯を賭けて挑む目的を持てたなら、
実現に向けての困難は決して苦にならず
常に達成後の喜びに心は浸されている。』

本書は、こうした思考連鎖を体感するのに
最適な書籍であると感じています。

そして、じっくりと原書と向き合う時間を
確保していきたいと考えています。

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まとめ(「世界の名著」)

今回は、『世界の名著』(河野健二編)
について、お伝えしました。

『人間の精神を実際に養うものは、
偶然に出会った二、三の書物や著者で
あることが多い。』

この著者の言葉が思いのほか、心に深く
染み入るように感じています。

いつも手元に置いておきたい
一冊を求めて「せきがくの旅」を始め、
それは、今でも続いています。

「天を摩す巨木の森」(世界の名著)を
彷徨っているところなのです。

精神を養ってくれる希望の一冊に、
きっと出会えると信じて。

ぜひ、あなたもこの雄大な巨木の森へ

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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