◉PSA検査(正常値0~4ng/mL)を早めに!前立腺癌は早期発見で根治可能です。私はPSA値310でした。グリソンスコア8、前立腺癌、リンパ節と骨に転移し、ステージⅣ(5年生存率30~50%)、根治はなくなり共生の道を探っています。
第25話:新境地 死の研究を超えて―『生きること』への意識転換
末期がん(ステージ4)の告知を受けてから、前立腺癌に関する本を読み、Webで調べ続けてきた。
ホルモン治療が始まり、背中の激痛が治まってからは、その学びの量もさらに増えた。生存確率、治療法、根治が望めない現実、そして「共生」という考え方。末期がん患者が残された時間をどう過ごすかについて、ひと通り理解できたように思う。
ただ、気持ちの整理は容易ではない。家族や周囲には努めて明るく振る舞っているが、内心では日々気持ちが萎えていく。
人は未来を事前に知ることはできない。明日、死ぬかもしれない。しかし、そればかりを考えていては生きていけない。そのために、人には「忘れる」という能力がある。死を忘れることで、人は日常を生きていけるのだ。
だが、癌の告知を受けるとそうはいかなくなる。「死ぬのか!」という思いが頭から離れず、告知以来ずっと癌のことを考え続けてきた。今、その疲れが出始めている。
それでも、共生のために学んだことは実践している。どこまで効果があるかはわからないが、一縷の望みを託して。5年生存率が30〜50%と言われる中、その目安を少しでも延ばしたいと願っている。
取り組んでいることは二つある。
一つ目は、早朝5時に起き、山道を散策しながらシャドーボクシング、ゴルフの素振り、ストレッチを行うこと。前立腺癌は低酸素・低体温を好むと聞いた。男性ホルモンについては治療に頼るしかないが、酸素と体温については日々の運動で対策できると考えている。山の緑やマイナスイオン、空の青も、生命維持に力を与えてくれると信じている。
二つ目は、飲食の工夫。トマト、魚、ブロッコリー、緑茶、コーヒー、ブラックチョコレートを意識して摂り、タバコと酒は断った。
先日、書店で出会った一冊に心を揺さぶられた。
「心から望むものが何であるかを知り、その思いが心に根付くまで願えば、そのようになる」――この言葉に私の意識は変わった。
これからは「死の研究」は控えたい。少しでも長生きするためとはいえ、毎日死について考え続けることは、貴重な残りの人生を費やすことになる。思考は現実化するという。ならば私は「生きること」だけを考えたい。
まだやり残していることがある。その目標を果たした自分を思い描き、明るい気持ちで生きていきたい。
身近なことでも、知らないことはたくさんある。山道で聞く鳴き声は何の鳥だろう。見慣れぬ木々の名は何だろう。空に浮かぶ白い雲はどんな名前なのだろう。そうした小さな発見を重ね、自然の中で「知る喜び」を味わいたい。
医師からは「骨転移が進むと突然下半身が動かなくなることがある」とも告げられている。再び、あの背中の激痛も訪れるだろう。
しかし、それもまた「来るべき時は来る」。だからこそ、その時まで楽しく、明るく過ごしていきたい。
書籍「教養としての哲学」に私淑しながら。
コメント