ものの考え方に気づく『議論のレッスン』

書評

『日本の社会では、場所を問わずわけの
わからない議論の論理でことが決定され
ている』

本書『議論のレッスン』(福澤一吉)
「あとがき」にこう記されています。

就職間もない頃、多くの会議に出席し、
当時全く同じ感想を持ったことを回想
できます。

今となっては、懐かしく思い出されます。

しかし、当時は、本来の議論の方法を
如何に学び、実践するか、

また、本来の会議の目的である
「決める場」を実現するために
奔走し、必死でした。

私は、そうした行動の積み重ねで、
正しく議論を進め、結論をだせる
そうした技術を習得しました。

それは、「合理的思考」と「議論の構造」
を理解することで実現できました。

前者は、「問題解決の思考技術」の著者
飯久保廣嗣氏に親炙しんしゃし、後者は本書に
私淑ししゅくしました。

後ほど詳しくお伝えしますが、本書では、
議論の方法を学ぶことで、3つの良いこと
があると記されています。

物事を分析的に把握できるようになる。

新たな考え方を知り、自己発見できる。

議論方法の選択で建設的議論ができる。

ぜひ、本書で学ぶことから得られる効果を
実体験して頂ければと思います。

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本書で学んだ素敵な言葉

『論証プロセスを経て結論に至るような
言動のことを「議論」と呼ぶ。』

論証プロセスとは、なんらかの根拠
(証拠)に基づいて、なんらかの主張
(または結論)を導く言語行動。

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ものの考え方に気づいていない方へ

「ものを考える」という行為には、
いくつかの種類があります。

「価値創造」、「問題解決」を目的とする
もの、その人の興味具合、境遇によって、
多様性のあるものといえます。

そして、自分の中だけで考えることと、
他人を含めて考えることに分かれます。

自分に対してなのか、他人に対して
なのかは別にして、何れの場合も
「議論」が発生してきます。

しかし、この「議論」の仕方を身につけて
いない人が多いという現実があります。

それ故に、「結論」がだせない、あるいは
時間がかかる、建設的な議論ができない。

最悪な状態は、結論には至ったが、誰かが
不幸になる等のよからぬ状態に陥る。

「ものの考え方」に気づいていないために
辛い思いをし、ストレスに悩む人は、多い
のだと思います。

まずは、「議論」の構造とルールを学んで
頂きたいと思います。

そうすることで「ものの考え方」に気づき
日々の事や人に関する悩みや苦痛が解消さ
れ、楽しく過ごせるようになります。

ぜひ、本書を手に取って普段の人とのやり
とりや議論の状態と照らし合わせながら、
読み進めていって欲しいと思います。

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「議論のレッスン」を勧める著者の考え

『議論の構造を知ることで、自分の
ものの考え方に気づくという体験を
して頂きたい』

著者は、本書の目的をこのように
記しています。

そして、そのために、議論とはそもそも
なんであり、その議論をわかりやすくする
ためには、どんな予備知識が必要なのかを
解説していくと述べています。

本書では、最初に議論について学ぶと
3つの良いことがあるとしています。

簡単にその内容を以下にまとめて
おきます。

❶議論のあり方を考え、知ることにより、
刺戟的な知的興奮を得られる。
意義ある議論を展開できるようになる。

❷議論を通して、自分を知るチャンスを
得られる。意思決定をする場合、その
プロセスにおいては、自分自身が議論の
相手になる場合が多い。

論拠を探り、ひもといていくことは、
自分自身すら気がついていなかった
自分のものの見方、考え方を発見し、
それに直面することに繋がる。

❸時と場合、内容と程度に合わせて
適切な「議論レベル」を選択できる
ようになる。

議論の内容によっては、ルールを適度に
提案することでより建設的な議論になる。

次に、本書で最も重要と思われる
「議論スキル」が満たされているかどうか
という基準を記しておきます。

質疑応答の際に意識すべきこととして、
大変参考になります。

❶発言者の主張が明示されているか。

❷発言者の主張がなぜ主張として成り立つ
かを示す根拠なり、証拠なりを提示して
いるか。

❸隠された根拠に関する言及があるか>

❹主張への飛躍のしすぎはないか、
論拠が正しく行われているか。

❺質疑応答において、聞かれていること
に答えているか。

以上は、本書「議論のレッスン」での
主要箇所と判断した内容になります。

議論が必要な場面においては、いつでも
実践できるように理解を深めておくことが
肝要かと思います。

本書で、ぜひ紹介しておきたい議論に関す
る考え方を少し、引用しておきたいと思い
ます。

【引用5選】

❶議論の定義

自分が一番言いたいことを「主張」又は
「結論」と呼びます。

主張と対になって提示される理由を
「根拠」、「証拠」と呼びます。

主張を根拠によって裏付けようとする
行為または、どうしてこれこれしかじ
かの主張結論になるかの理由を述べる
ことを「論拠」と呼びます。

❷議論の種類

根拠の適切性、根拠から主張への飛躍
の程度の吟味、隠された根拠の明示が
要求されないのが、日常の議論。

一方これらの内容の明示が必要である
のが、フォーマルな議論。

❸トゥールミンの議論モデル

トゥールミンの議論モデルを使うのは
隠れた根拠を光に充てることで分かり
にくくなりがちな議論を分かりやすい
議論にするためである。

論拠は、非顕在的である。
論拠には、裏付けが必要である。
裏付けとは、仮定の集合である。

❹議論のルール

反論を許すだけの議論構造を用意してから
主張すること。

議論の下準備が必要である。自分の主張は
論証を経ているか、根拠が提示されている
か、根拠に偏りはないか、根拠は主張を支
持するのに適切か、根拠から主張への飛躍
は適切か、論拠は明示されているかを考え
ておく必要がある。

❺主張の正当性

ある主張、結論にいたるまでにどの程度
正しい論証がなされたかを吟味してはじ
めて、その主張、結論の正否に関する判
断が可能となる。

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「議論技術」は早い時期に習得すべきとする私の考え

『議論技術を身に付けるべきである』
私は強く感じています。早い時期に。

それは、多くのひとが、社会に出る前に
教育を受ける機会がなく、議論に苦慮
するケースが多いと感じるからです。

私も社会人になったばかりの頃、
会議の場で、そう実感しました。

そして、議論の仕方に関する書籍を
探しました。

「議論に絶対勝てる方法」、
「ハーバード流交渉術」等々、
「やくざに学ぶ交渉術」まで
多くの書籍を読み漁りました。

そして、いろいろな議論の仕方を実際に
会議で試し、改善しながらこれならばと
いう「議論技術」に仕上げました。

そうした試みの中で、本書は、大変参考
になりました。

まずは、多くを学び、実践し、自分に
あった形を創り上げることが大事だと
感じています。

これは、「議論技術」に限ったことでは
なく、例えば、「問題解決の手法」等、
多くのことに共通して言えることです。

では、私が本書を中心に他書籍の教えを
参考に考え、実践している「議論技術」
についてお伝えします。

(1)相手の主張に同意できるかどうか
を見極める。

(2)主張に同意できなければ、議論の
開始である。根拠の正当性を確かめる。
確かめ方は、以下の4つ。

❶根拠が「事実」であれば、確認する。

❷根拠が「仮説」であれば、検証する。

❸根拠が「信念」であれば、共感できる
かどうかを判断する。

❹根拠が「傲慢」であれば、絶対に
許してはならない。

(3)根拠は正しいが、主張に同意でき
ないのであれば、主張と根拠の繋がりに
問題がある。それを確かめる。(論証)

以上が、私の「議論技術」です。

どのようにお感じになりましたか?

ぜひ、「議論技術」について、議論を
してみて頂ければと思います。

できる限り多くの人と。
年代、性別、業種を越えて、
議論をしてみて下さい。

それまでとは異なった、多くの発見が
あると思います。

そして、構築した「議論技術」を
社会に出る前の子どもたちにも、
ぜひ、教えてあげたいのです。

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まとめ(「議論のレッスン」)

今回は、『議論のレッスン』(福澤一吉)
についてお伝えしました。

著者は、「終章」において、次のような
表現で注意をしています。

『議論スキルは、諸刃の剣でもある』

むやみやたらに議論の必要のない場面で
試し切りをし、自分が大けがをすること
もあるかもしれません。

ですので、議論すべきかどうかは、
最初に判断をしなければなりません。

そのためには、その判断基準を明確
にして備えておく必要があります。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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