珠玉のアンソロジー『人生には何ひとつ無駄なものはない』

書評

『人生の意味がなかなかわからぬから、
我々は生きる甲斐もあるのだ』

これは、本書『人生には何ひとつ無駄な
ものはない』(遠藤周作)の第一章に
記されている言葉です。

実に得心の行く言葉です。

明日のことは、明日になってみなければ
実際のところはわからない。

それは、良い意味でのことと、
悪い意味でのことの両方がある。

前者は、わくわく感と共に楽しみであり、
後者は、いくら心配をしても仕方がない。

最大限の予測と事前対策を済ませ、あとは
天命を待つ思いで眠りにつくことが良い。

私は、そう思いながらここまで
生きてきました。

著者のこの言葉に共感を覚えながら、
私の「せきがくの旅」は始まりました。

本書は、八つの章で構成されています。
ご自身の人生観と照らし合わせながら
読み進めて頂ければと思います。

・人生には何ひとつ無駄なものはない
・愛するとは棄てないこと
・神は存在ではなく働きである
・人生の廃物利用のコツ
・あなたの他にもう一人のあなたがいる
・不幸がなければ幸福は存在しない
・心の不可思議 心の暗闇
・人生体験ではなく芸術体験という真実

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本書で学んだ素敵な言葉

人生は抱き締めれば抱き締めるほど、
やがて燦然さんぜんたる光を放つようになり
ます。

(本書「1章」より)

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真摯とユーモラスを大切にする著者の考え方

六十歳になる少し前ごろから私も自分の
人生をふりかえって、やっと少しだけ


「今のぼくにとって何ひとつ無駄なものは
人生になかったような気がする」と


そっと一人で呟くことができる
気持ちになった。

これは本書「1章」に記されている著者の
言葉です。

著者は、その思いの深さを
次のように記しています。

表面は貧弱にみえた出来事や経験、表面は
偶然にやったようなことにも実は深い意味
がかくされていて、その意味の珠と珠とが
眼にみえぬ糸によってつながれ、今の自分
を形づくっていることが感じられる。

同年代だからなのでしょうか、
私もこれまでを振り返ってみて
そう思えるのです。

「無駄なことはなかった」と。

とても意味深い、心に残る著者の思いを
感じます。

それでは、本書の中で私が特に興味を
惹かれた箇所を引用しておきます。

本書に綴られた考え方を知り、
自分はどう考えどう行動に活すのか、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。

【引用5選】

❶神はその無駄とみえるものに、実は我々
の人生のために役にたつ何かをかくしてい
るのであり、それは無駄どころか、貴重な
ものを秘めているような気がする。

❷プラスにはマイナスがあり、マイナス
にはプラスがある。

どんなすばらしい主義主張も限界をこすと
マイナスになり、どんなすばらしい善も
限界をこすと悪になることを知ることだ。

❸苦しいことは楽しみながら
やったほうがよい。

この人生では嬉しいことは三分の一で
あとは平凡な苦労の連続だ。

❹人にはそれぞれそれによって助けられな
がら生きていく支柱のようなものがある。

ある人にとっては仕事であり、ある人に
とっては名声や地位や権力であろう。

しかしそういうものと次元を異にしている
支えや助力者は人間には必要なのだ。

❺だらしなく、うす汚れた我々の日常生活
にも「し~ん」とした何かが入り込んでく
る時がある。

その時を私は「人生の時」とよびたい。
それは「生活の時間」にさしこんできた
「人生の時間」なのだ。

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本書に私淑して私が思うこと

『善も限界をすぎれば悪になり、
愛も限界を過ぎれば人を苦しめる』

これは、本書「1章」で紹介されている
著者の言葉です。

自分のこれまでの言動を振り返り、
深く考えてみたい言葉です。

私は、人に深く関わりを持つことを
大事にして生きてきました。

人生を共に謳歌するため、あるいは、
問題を解決するために。

人生に影響を与えるような大きな問題を
解決するには、人の力が必要です。

故に、人と深く関わることの重要性を
心から感じています。

それは、過去の人生経験から、とても
大事なことでもあると認識しています。

著者は、次のように言葉を
進めていきます。

あなたが、いつもかならずしも正しいとは
かぎっていないし、

無意識のうちにマイナスがあるということ
を自覚すれば、錦の御旗を掲げて誰かを
裁いたり、非難したりするような人間に
ならずにすみます。

何ごとにもこれがただ一つ、絶対なものだ
と執着するな、それにこだわるということ
です。

いかに正しいこともそれを限界を超えて
絶対化すると悪人なる。また逆に悪くみ

えることも限界内では善い部分がある。

どこで留め置くかは、人生を歩み続ける
ことで、いづれどこかのタイミングで
理解できると思います。

本書は、そのことを実例を含めて優しく
伝えてくれます。

ぜひ、手に取って、じっくりと
読み進めて頂ければと思います。

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まとめ(珠玉)

『苦しみを受け入れること、ヨブのように
その苦しみを受け入れてこそ、見えて
くる人間の真の幸せというものがある。

これは、本書に記された著者の考えです。

苦しみを受け入れてこそ、その先にある
景色を手にする権利が生じるように思い
ます。

それが、幸せなのか、不幸な辛さなのか、
わからない。

しかし、前に進むしかない人生においては
とても大事な、そして、必要なことだと思
えます。

「人生に無駄なものはない!」

とても、いい響きです。

今、人生に迷いがあるのでしたら、
あるいは、苦しむ環境の中にある
のでしたら、

ぜひ、本書を読み進めて頂ければと
思います。心が休まるひと時を過ご
せるはずです。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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