考えるとは?『思考の整理学』

書評

『われわれはそれぞれ、いつのまにか
我流の考え方、自分だけの考えの
まとめ方をもっている。』

本書『思考の整理学』(外山滋比古とやましげひこ)の
「あとがき」に記されたこの言葉に
深く得心とくしんしました。

記憶を振り返ってみても、子どもの頃は
特段、ものごとの「考え方」について、
教えられた記憶など思い出せない。

本書で著者が語っているように、
誰かの考えを見て、自らの経験を通して、
独自の考え方をするようになっている。

多くの人は、おそらく、じっくりと
考え方について考えてみる時間を持つ
こともなく、過ごしていると思うのです。

なぜ、そのような状況になったのか?

本書では、学校教育を「グライダー」に
例えて、次のように解説しています。

「学校の生徒は、先生と教科書にひっぱ
られて勉強する。自学自習ということば
こそあるけれども、独力で知識を得るの
ではない。

いわば、グライダーのようなものだ。
自力では飛び上がることはできない。」

とても、わかりやす表現です。

他にも、「触媒」、「アナロジー」、
「セレンディピティ」等々を伴い、
思考について、展開されていきます。

本書は、「考える」とはどういうことか、
考えを深めるのに良い教材といえます。

私も30代半ばまでは、独自の考え方で
多くの問題解決に携わっていました。

しかし、ある方のおかげで、その後
心の保険となる「合理的思考」を
習得することができました。

それは、私の肌感にあう問題解決の考え方
であり、その後、新たな事業を進める際に
多くの決断を支えてくれました。

目標を持って進める中で、経験となにかの
きっかけで、自分にとって相応しい考え方
に出会う機会は訪れるものです。

本書もその中の1つといえます。
お勧めします。

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本書で学んだ素敵な言葉

『考えるのは面倒なことと思っている人が
多いが、見方によってはこれほどぜいたく
な楽しみはないのかもしれない。』

何かのために考える実利実用の思考のほか
に、ただ考えることがおもしろくて考える
純粋思考のあることを発見してよい時期に
なっているのではあるまいか。

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時間をかけて考えるが自ら解決に至らない方へ

ある問題が発生した場合、どう処理をして
いるだろうか。

いろいろと考えてはみるが、どう対処して
良いかがわからない。

悩んでいるうちに、タイムリミットが
まじかに迫ってくる。

そうした状況に陥ると、自ら解決策を
見出せない人の多くは、誰かに尋ねる
ことになる。

「どうすれば良いでしょうか?」と。

そして、指示を受けた内容を忠実に
実行する。

もし、それでうまくいかねば、自分の
せいではないと理由付けをする。

過去と同じことを繰り返していれば
問題のない時代であれば、それでも
良かった。

しかし、今は、変化の時代である。
刻々と環境は、進化し、変わっている。

当然問題も多様化している。

したがって、自ら状況にあわせた思考方法
を身に付ける必要がある。

本書を読み進めることで、一歩そこに
近づくことができるはずです。

問題を見極め、原因を究明し、
自らの力で対策を講じる。

そうした思考能力を自らの努力によって
身に付けるべき時代に来ている。

本書は、考えるという行為を見事に分解
し、解析し、整理をし、自ら築き上げる
技術を伝えてくれています。

著者の考えについて、自分はどう考え、
どう行動に活かすのか、じっくりと自ら
に問いながら、読み進めて頂くことを
願っています。

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「考えるとは」をテーマに思考の極限を追求した著者の考え

『ものを考え、新しい思考を生み出す
第一の条件は、あくまで独創である。』

『自分の頭で考え出した、他の追随を
許さない着想が必要である。』

著者は、冷静にこう分析しています。

そして、大事なこととして、以下を
付け添えています。

『それを振り回していては、説得力が
ない。せっかくのアイディアも、悪い
ドグマに見える。』

「独創」に対する期待は、非常に大きい。
しかし、大きな危険をはらむのも事実です。

ものを考える立場にある指導者は、自信
があることは勿論必然だが、謙虚でなけ
ればならないといえます。

著者は、それを次のような粋な言葉で
記しています。

『人を酔わせながら、独断におちいらない
手堅さを持っている。』

著者が繰り返し伝えている望ましい
「独創」の姿を学んで頂ければと
願っています。

本書で、ぜひ紹介したい思考に関する
考え方を少し、引用しておきたいと
思います。

【引用5選】

❶触媒反応

詩の創造に際して起こるのは、酵素と二酸
化硫黄とのあるところへ、プラチナのフィ
ラメントを入れたときに起こる化学反応に
似ている。

どこにアナロジー(類推)が成立するかと
いうと、触媒材であるプラチナが化合の前
後で、まったく増減、変化がないというの
が、詩人の個性のはたす役割に通ずるもの
がある。

❷セレンディピティ(偶然の産物)

行きがけの駄賃のようにして生まれる発見
や発明をセレンディピティと呼んでいる。

目的としていなかった副次的に得られる
研究成果がひろくセレンディピティと
呼ばれるようになった。

人間は意志の力だけですべてを成し遂げる
のは難しい。無意識の作用に負う部分がと
きにはきわめて重要である。

セレンディピティは、われわれに
それを教えてくれる。

❸情報のメタ化

人為としての情報は高次の抽象化へ昇華
して行く。思考、知識についても、この
メタ化の過程が認められる。

思考の整理というのは、低次の思考を抽象
のハシゴを登って、メタ化して行くこと
にほかならない。

思考の純化と言いかえることもできる。

❹既知・未知

知的活動には三つの種類がある。
・既知のことを再確認する。
・未知のことを理解する。
・まったく新しい世界に挑戦する。

知識あるいは経験が先にある。
そのあとから、同じ、ないしは、
よく似た知識があらわれる。

両者を関係づければ、わかった
という自覚になる。

未知を読む能力は、想像力による
ほかはない。

解釈が必要である。ことばを手がかりに
未知の世界へわけ入って行く。

それで何とかわかれば、未知を既知に
することができる。

❺創造性

創造性の開発がやかましく言われ出した
のは、偶然ではない。

人間が、真に人間らしくあるためには、
機械の手の出ない、あるいは、出しに
くいことができるようでなくてはなら
ない。

創造性こそ、そのもっとも大きなもの
である。

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「考えるとは」こう自らに問う中で得た私の考え

私は、価値創造と解決提案、この二つの
ことを永きに渡り考え続けてきました。

後者については、「合理的思考」に
出会い、自らの考えを目的点に着地
できました。

しかし、前者については、まだ思考途中の
状態でいます。

解決のロジックとは異なり創造の過程は
なにかとなにかを合わせることで生まれ
てくるものを期待する必要があります。

「なにか」とは、なにか?

本書は、その疑問の解決に大きな影響を
与えてくれています。

「触媒」という媒体の性質を分析すること
で、創造のきっかけが脳の中で発火する、
その瞬間を刹那にイメージできます。

本書は、このような感じで、思考過程に
助言を与えたくれます。

あるいは、「セレンディピティ」という
存在。偶然の産物についての展開は、
日常の生活習慣の見直しの重要性に
気づきを与えてくれます。

創造行為に対する「無意識」の影響力、
潜在意識が起こす解決力の大きさ。

経験の中で、その力を実感できます。
しかし、残念ながら、意図的には
なしえない状態です。

ただ、一度睡眠をとると、その効果を確認
できる確率は高まる事実はあります。

この潜在意識による解決に頼り、朝を待つ
ことは、よくあります。工夫により、日に
二度その機会を得てもいます。

価値創造については、まだ学びの途中で
す。本書「思考の整理学」を含め学びを
続けることが肝要と考えています。

時間をかけて良いと考えています。

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まとめ(「思考の整理」)

今回は、『思考の整理学』(外山滋比古)
についてお伝えしました。

『書くことで自分の考えを押し進める、
書くことは考えることである。』

著者のこの言葉にある考えは、本書を
読み進める中で実感できます。

更に著者の言葉は、次のように続きます。

『何かを考えたら書いてみる。その過程に
おいて考えたことが、It seems to me
から、少しずつ I think へ向かっていく。

われわれはだれでも、こういう意味での
エッセイストになることができる。』

本書を読み終えた時に、こうした著者の
言葉の意味が、からだで理解できること
と思います。

私は、読後から今でも、
「気づきと発想」のノートを
いつも手元においています。

こうした書くことを意識して、日々の
思考を続けていけば、きっと良い方向
に「こと」は向かうことと思います。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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