「熟慮断行」
見識を持って決断をし、断行する。
則ち『胆識力』を磨くことが肝要。
私が常に心掛けてきた言葉です。
本書に出会い、あらためてこの言葉の
意味深さと、今後も意識の中心に置く
べきと確信することになりました。
本書『中国古典の名言録』(守屋洋)は、
人生を歩む中で「心の指針」となる名言、
箴言が訥々とした口調で語られています。
歴史的に定評があって、その意義が保証
された言葉であるということ。
疑問に思えるこの世界情勢の中にあっては
こうした「名言」と事ある毎に向き合って
みることが、非常に大事なのだと感じてい
ます。
世の中は全てが、人とのかかわりの中で
成り立っていると思うのです。
ぜひ、本書の名言録を参考に、人につい
て、そして、人生について、考えてみる
ことをお勧めします。
人間学を学べる素敵な言葉
兵を用うるの害は、猶予最大なり
なかなか決断ができない慎重な方へ
・決断に時間がかかる
・助言に対して必要以上に納得する
・トップダウンの指示ができない
いかがでしょうか?
こうしたタイプの方が身近に、又は
取引先にいませんか?
あるいは、ご自身がそうした状態に
ある方はいませんか?
こうした状態はよろしくないように
思われますが、見方、言い方を変え
れば、長所にも感じられたりします。
例えば、慎重である、素直である、
仲間意識が強い等々。
しかし、予期せぬことが、予期せぬ時に、
予期せぬ甚大な問題に発展することがあ
るのです。
特に変化の激しい現代においては、決断を
先延ばしにすることは、とても大きなリス
クを抱えることになります。
蓋し、胆識力が必要なのです。
胆識力を磨き、早期に決断し断行できる
ように日々の訓練が大事だと思うのです。
その訓練の際に、ぜひ手元において
おきたいのが本書『中国古典の名言録』
なのです。
熟慮断行、原理原則と人間学を重視する著者の考え方
「いま、中国の古典が読まれている。」
本書は、この1行から始まります。
そして、著者守屋洋氏の言葉が以下の
ように、連綿と続きます。
「中国古典は人間学の宝庫だといわれる。
人間をどうとらえるか、人生をどう生きる
べきか、人間関係にどう対処すべきか、
あるいはまた、上に立つものはどうあるべ
きかなど、人間学の広範なテーマが様々な
角度から説きあかされている。」
この世に生を受けたからには、著者が語る
ように「人生をどう生きるべきか」と考え
ることは、とても重要なことなのです。
著者は、こうも言っています。
「新しい情報を仕入れないことには、時代
の変化に取り残されていくに違いない。
だが、新しいものばかり追いかけていた
のでは、いたずらに変化の波に押し流さ
れてしまう恐れがある。
社会は厳しく変化しているように見えても
その底には、変化しない部分が厳として
存在している。
人間学は、変化しない部分の代表的なもの
であろう。」
そのとおりである。
科学は目覚ましい進化を遂げてきたが、
人としての考え方は、2千年前とそう
変わりはしていないように思える。
科学はその成果を伝えていくこができる。
しかし、人の考えや思いというものは、
そう簡単に伝わるものではない。
なぜなら、人は一生をかけて人生の意味
を知ることになる。
「ああ、そうなんだ」と長い経験を通して
理解できたとしても、そのときは、人生を
終える時なので人に伝わるものではない。
そして、最後に著者はこう語っています。
中国古典の人間学は、もっぱら原理原則
を説いている。
原理原則なるがゆえに、時代の変化に
ほとんど影響されていない。
こうした考えをもとに著者に選出された
「中国古典の名言録」を引用します。
ゆっくりと読み味わってみて下さい。
そして、ぜひ、この名言録の意味と
考え方を理解してください。
ご自身の考え方と照らし合わせて今後の
生きる糧として頂ければと願っています。
【引用5選】
❶兵を用うるの害は、猶予最大なり
(呉子)
ぐずぐずためらって決断しないことは、
用兵上の最大の欠点である。
進むにせよ、退くにせよ、決断すべき
ときにきちんとした決断ができなかっ
たら、厳しい現実を生き残ることは
できない。
仕事に取り掛かる前に十分な調査研究
を行うこと。
勝算ありと見たら、断固実行に移ること。
これはいけると思ったら、最後まで
やりとおすこと。
❷士は以て弘毅ならざるべからず
(論語)
人の上に立つ人物は、広い視野と強い意志
力、この二つを持たないと務まらない。
経営だけではない。われわれの人生におい
ても、なんどか、ここぞという正念場がお
とずれてくる。
そこを乗り越えるためには、やはり強い
意志力が欠かせない。
そして、また、そこを乗り越えてはじめ
て自分を一回りも、二回りも大きくして
いくことができるのである。
❸百里を行く者九十を半ばとす
(戦国策)
百里の工程を旅する者は、九十を過ぎた
ところで半分終わったと心得なさい。
ものごとを成し遂げるうえで、最終段階の
ツメの大切なことを指摘した言葉である。
何か一つのことを成し遂げるためには、
持続的な努力を必要とする。
トップにはいささかの気持ちのゆるみも
許されない。たえず緊張を持続させていく
ことがもとめられている。
なぜなら、トップの心の驕りや一瞬の油断
がたちまち組織を崩壊の危機にさらしかね
ないからだ。
❹心を養うは寡欲よりも善きはなし
(孟子)
心を安定させるためには、寡欲にまさる
ものはない。寡欲というのは、欲望を少
なくするという意味。
欲望がゼロになったら、もはや人間とは
言えない。人間に欲望があることによっ
て、社会は進歩してきた。
人間の欲望は、「両刃の剣」である。
うまくコントロールして使えば生活を向上
させ、社会の進歩を促すことができる。
だが、やみくもに充足させようとするなら
心のバランスを狂わせ、生活まで破綻させ
てしまう。
❺人を論ずるにはすべからく二三の渾厚を
帯ぶべし(呻吟後)
他人を論じたり批判するときには、二三分
ぐらいは渾厚があってしかるべきだ。
人には誰でも他人様に触れられたくない
事情があるものだ。それをぐさりと突き
刺されたのでは、必ずや堪えがたい思い
をするにちがいない。
渾厚をもって対すれば、相手に自分を
とりつくろう余地を残し、反省の機会
を与え、相手の面子を立ててやること
ができる。
したがって、人間関係もスムーズに
いくというわけだ。
次に、私が本書で得た気付きと考え、更に
その後の人生において受けた影響について
お伝えします。
中国古典の名言録から得た私の考えと行動
「中国古典の名言録」の中で、私が一番に
思うのは、やはり「熟慮断行」です。
これまでの人生において、常に意識をして
きたことでもあります。
いかにすれば、時間をかけずに
状況を把握して決断できるのか?
また、決断したことを覚悟を持って断行
するには、どのようことを基軸として、
心を整えれば良いのか?
多くの書物に私淑し、この方と思える人
に親炙し、その答えを探してきました。
「自分の考えの本質は、変えたくない!」
そうした中で得た知恵が、自分の本質は
変えずに、自分を広げるという考え方。
この考えに自分を浸してみて、これこそが
自分に合った生き方なのだと。
熟慮断行には、合理的思考による論理的な
技術と心を支え、前に進める力が必要であ
るとの強い思いに至りました。
前者は「問題解決の思考術」の著者である
飯久保廣嗣氏に教えを受けました。
そして、後者については、本書名言録も
そこに導いてくれたものの一つといえます。
「兵を用うるの害は、猶予最大なり」
いつ、いかなる問題が生じるかは、
わかりません。
大きな目標に向かって進んでいる時ほど
その頻度は増していくものです。
限られた情報と期間の中で、適切な判断
をして、策を進めていかねばなりません。
基本は経験で対処、そして、過去にない
問題であれば、策に対するリスク分析を
しっかりと決めた時間内で行う。
進めると決めた策の将来問題が発生する
確率と影響力。
その分析結果から問題が起きないための
対策と起きた時の対策をしっかりと考え、
事前の対処を行う。
決断するためには、現状把握、原因究明、
意思決定の思考技術が必要であり、
自信をもって断行するには、リスク分析
の思考技術が必要です。
そして、ハートの面では、とにかく経験
と強い覚悟が必要であると思っています。
まとめ(経験と私淑から将来の自分を見つめてみる)
今回は、『中国古典の名言録』(守屋洋)
についてお伝えしました。
自分が向かうべき先が見つかると、
人生が楽しくなります。
大きな目標であるほど、やりがいも
大きくなることと思います。
困難はあります。
しかし、心を支えてくれる
一冊の本が頼りになります。
本書をその候補のひとつにされて
みてはいかがでしょうか?
経験は実際に自分で生きていく中で得る
ものと、もう一つは先人の経験。
良き書物に私淑することで
叶うものと思っています。
「中国古典の名言録」もその中の一冊。
ご自身のこれまでの人生、そして、
これからの人生を想像しながら本書と
過ごしてみてはいかがでしょうか?
きっと、これまで気付かなかったことが
筆書の紙に綴られ、静かに心の中に一枚
一枚重なっていくことと思います。
私がそうであったように
きっとあなたにも
ボアソルチ
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
コメント