確かな指針方針『論語と算盤』

書評

『士魂商才』

これは、本書『論語と算盤』(渋沢栄一)
(守屋淳訳)の「第1章の処世と信条」に
記された言葉です。

実に明瞭で意味深く、深く心に残る言葉と
いえます。

著者は、次のように説明をしています。

『人の世の中で自立していくためには武士
のような精神が必要であることはいうまで
もない。

しかし、武士のような精神ばかりに偏って
商才がなければ、経済の上からも自滅を招
くようになる。

だから「士魂」とともに「商才」がなけれ
ばならない』

私は、50歳を過ぎてから独立した身です
が、その際にまず、心に置いたのが、心身
を鍛え直すことでした。

まだまだ続く人生、やはり精神と健康の
バランスを整え直す必要を感じました。

そこで、前者についての私淑の書として、
本書「論語と算盤」の現代語訳を手にしま
した。

若いころに目を通した本書とは異なり、
現代語訳は読みやすく、理解しやすく
感じました。

また、ここまでの人生経験の量も当時とは
異なり、感ずるところも増えたように思い
ます。

本書を読み進めることで、自分の気づきあ
げてきた大切にしているものをさらに深め
行動に活かすことができたように感じてい
ます。

もうひとつ、本章に記された印象深い著者
の言葉を次にご紹介致します。

『士魂を書物を使って養うという場合いろ
いろな本があるが、やはり論語がもっとも
士魂養成の根底になるものだと思う。

では、商才の方はどうかというと、こちら
も論語で十分養えるのだ。』

いかがでしょうか?

前者はともかく、後者については、意外な
感じを抱くことと思いますが、そこが、
この論語の素晴らしさだと感じています。

著者がなぜ、論語に大きな期待を抱き、
その論語で実業界における偉大な事業を
成し遂げられたのか、

その深い意味合いと意義を含め、
ゆっくりと読み進めて頂きたい!

そのように思っています。
では、良い「せきがくの旅」を!

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本書で学んだ素敵な言葉

自分を磨くというのは、自分の心を耕し、
成長させることだ。

言葉で言えば、練習、研究、克己、忍耐と
いった熟語の内容をすべてを含み、理想の
人物や立派な人間に近づけるよう少しずつ
努力することを意味している。

だから、自分を磨いたからといって
「自分らしさ」が損なわれてしまう
ようなことはない。

(本書「16章」(人格と修養)より)

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独立をして新規事業に挑むあなたへ

『道理と事実と利益とは必ず一致するもの
である。」

これは、本書を読み始めて最初に心に留め
ておきたいと感じた言葉です。

道理と事実と利益の意味する本質的なこと
を考え始めるきっかけになりました。

著者が事業を進めるために論語が必要で
ある旨を以下の言葉で表しています。

『論語とソロバンというかけ離れたものを
一致させることが、今日の急務だと自分は
考えているのである。』

その根拠となる次の言葉が、実にストレー
トであり、深く印象に残っているのです。

『モノの豊かさとは、大きな欲望を抱いて
経済活動を行ってやろうというくらいの気
概がなければ、進展していかないものだと
考えている。』

そして、そのもっと奥深いところの著者の
思いは、以下の言葉に現れています。

『政界や軍部が大きな顔をしないで、
実業界がなるべく力を持つようにし
たいとわれわれは希望している。

実業とは、多くの人に、モノが行き
わたるようにするなりわいなのだ。

これが完全でないと国の富は形に
ならない。

国の富をなす根源は何かといえば、
社会の基本的な道徳を基盤とした
正しい素性の富なのだ。』

以上が、著者が実業界に身を転じた理由を
表した内容であると理解をしています。

これから新たな事業を進めるべく独立をし
た方、あるいは、考えている方には、ぜひ
本書を読むことで、先人の情熱と困難さを
含め、生きる姿を知って頂きたい、

そのように思うのです。

独立する際には、多くの事を考えることに
なります。そして、独立後は、もっと大き
な比重で考え続ける必要が生じてきます。

その際には、利潤追求と道徳がバランス
良く伴っている必要があります。

そのためには、論語が最も相応しく、
最も手元におくべき書物であると理解
をしました。

私の独立のきっかけは、
「正しく事業を進めること」です。

自分の信条に沿って、
「正しく生きること」です。

本書「論語と算盤」は、その為の
大きな支えとなっています。

ぜひ、新たな挑戦に挑む方に
お勧めします。

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「論語と算盤」を事業推進の指針とする著者の考え

『正しい行為の道筋は、天にある日や月の
ように、いつでも輝いていて少しも陰るこ
とがない。』

実に意味深く、良い響きの言葉です。

これは、著者が本書「第10章の成敗と
運命の章で記している言葉です。

「正しい行いをして、堂々と生きる」そう
決めて新たな事業を始めることを決意した
私を大いに勇気づけてくれた言葉です。

さらに、著者は次のように言っています。

『正しい行為の道筋に沿って物事を行う者
は必ず栄えるし、それに逆らって物事を行
う者は必ず滅んでしまう。』

事業を進めるにあたっては、様々な決断に
迫られることになります。

その際に、なにを基準として進め、何を
最も大切にして判断をするべきか。

ここが非常に大事になってきます。

ここを誤って私欲に走る、許されぬ
経営者も中には存在します。

本来、決してあってはならないことです。

著者が示す「論語と算盤」は、正しく事業
を進めるための必読の書と言えます。

ぜひ、一読されることをお勧めしたいと
思います。

では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
箇所を引用しておきます。

本書に綴られた考え方を知り、自分は
どう考え、どう行動に活すのかを、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。

【引用5選】

❶論語は全ての人に共通する実用的な教訓

論語には、おのれを修めて、人と交わるた
めの日常の教えが説いてある。

論語の教訓に従って商売し経済活動をして
いくことができると思い至ったのである。

❷時期を待つ必要がある

世の中のことは、「こうすれば必ずこう
なるものだ」という原因と結果の関係が
ある。

正しいことをねじ曲げようとする者とは
何があってもこれと争わなければならな
い。

また、気長にチャンスが来るのを待つ
忍耐もなければならない。

❸立派な人間が真価を試される機会

「人にはどうしようもない逆境」とは、
立派な人間が真価を試される機会に外
ならない。

逆境に立たされた場合、「自己の本分」
だと覚悟を決めるのが唯一の策

❹大きな志と小さな志との調和

志を立てる要は、よくおのれを知り、
身のほどを考え、それに応じて相応しい
方針を決定する以外にないのである。

❺熱い真心が必要だ

自分のやるべきことに深い「趣味」を持っ
て努力すれば、すべてが自分の思う通りに
ならなくても、心から湧き出る理想や思い
の一部分くらいは叶うものだと思う。

理解することは、愛好することの深さに及
ばない。愛好することは、楽しむ境地の深
さには及ばない。

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本書「論語と算盤」に私淑して私が思うこと

『先の見えない時代に確かな指針を
与えてくれる』

本書表紙に記されたこの言葉に強く惹かれ
ました。

予測できない未来を生き抜くためには、
確固とした思想と意志、そして、覚悟
が必要であることを感じました。

では、如何にして、それを心から納得
できる形で備えることができるのか。

本書「論語と算盤」は、そのための道筋を
与えてくれたように思います。

良き書物を選び、深く私淑し、そして、
自分で幾度も考えることで、少しづつ
理想の姿に近づいていく、

そう思っています。

「道理と事実と利益とは必ず一致する」

この言葉が示す意味深い本質を求めて
本書を読み進め、自分なりの事業への
向かい方を定めることができたように
思います。

本書と共に非常に貴重な時間を過ごすこと
ができました。これからの人生において力
強く生き抜くための知恵を授かりました。

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まとめ(「競争の道徳」)

今回は『論語と算盤』(渋沢栄一)
についてお伝えしました。

「人はどう生きるべきか」

「どのように振る舞うのが人として格好
よいのか」

を学ぼうとするとき、その基本的教科書
になっていたのがこの古典だった。

以上は、本書「はじめに」に記された内容
です。

この言葉に導かれて「せきがくの旅」は
始まりました。

そして、最も心に残ったのが、以下の言葉
でした。

『栄一は、この論語の教えを、実業の世界
に植え込むことによって、そのエンジンで
ある欲望の暴走を事前に防ごうと試みたの
だ。』

実に、興味深い、
「競争の道徳」を感じます。

その画期的な発想と現実的ともいえる
テクニックに驚くばかりです。

歴史に残る事業家としての実績は、こうし
た徹底的に考え抜かれた経緯があったこと
を知ることができました。

そして、それを生み出す知恵と行動力の
大きさは、絶大なものであったと想像で
きます。

「私淑の喜び」といえます。

新規事業に挑む方には、ぜひ、この私淑
を体感されますことをお勧めします。

きっと、いくつもの事業化のヒントを
得られることと思います。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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