『応用の才気無キモノハ、実施家タル事ハ
六ヶ敷候』(ムツカシクソウロウ)
日露戦争時の日本海海戦で、バルチック
艦隊を破る原動力となった参謀秋山真之
の言葉です。
実践家になるためには、「応用の才気」
を身に付ける必要がある。
本書「最高の戦略教科書孫子(守屋淳)」
を手にしたのは、この言葉を目にしたこと
によります。
今から二千五百年前に書かれて今なお絶大
な影響力を誇る古典「孫子」。
愛読者のリストには、ビルゲイツ、孫正義
等が名を連ねます。
自ら顧客を創出し、仕事を創り出し与える
立場にあるものの多くは、試行錯誤の末に
本書に辿り着くのだと思うのです。
私もその中のひとりです。
「古典を活用するためには、抽象度をあげ
て考えることが重要」と著者は語ります。
簡単に言い直せばどうなるのか?
より一般的に表現するとどうなるのか?
といったように。
さらに「あっちの方向に進めば何とかなる
はず」という方向性の感覚と競争状態での
原理原則の感覚を養う必要がある。
方向性は歴史書に、競争状態での原理原則
は孫子に学ぶ。
そして、最も重要なことは、応用の才気が
なければ、いくら孫子を学んでも意味をな
さないということ。
「応用の才気」を持つことが、唯一評論家
ではなく、実践家として成果をあげる道な
のだと教えてくれます。
我々が養うべきものはこの『応用の才気』
に他ならない。
応用の才気は、企業経営の生き残りの才気
にも通じる言葉である。
過去の経験を通して、心からそのように
思うのです。
問題を解決するには、解決するための理論
が重要であり、実践する際には解決技術が
必要です。
前者については、幾冊かの書籍と共に本書
にも私淑し、後者については、
「問題解決の思考術」の著者である
飯久保廣嗣氏に親炙しました。
その際一番に心がけてきたことは、学んだ
ことを如何に応用し自分流に仕上げるか、
行動に移すか、ということです。
解決技術の教えを自らの課題に投影し、
最も適切な解決策を求めて行動する。
正しい方向に、正しい方法で動かなければ
解決には至りません。
本書には、「応用の才気」を養うための
貴重な教えが丁寧に語られています。
ぜひ一読されますことをお勧めします。
本書で学んだ素敵な言葉
およそ戦いは、正を以って合し、
奇を以って勝つ
敵と対峙する時は、正すなわち正規の作戦
を採用し、敵を破るときには、奇すなわち
奇襲作戦を採用する。
『応用の才気』を学びたい方へ
かつては戦争に勝つために多くの軍事理論
を学び勝利した将軍がいました。
そして、現代はビジネスの分野で経営理論
を学び成功している経営者がいます。
しかし、勝利に至らなかった将軍、成功に
至らない経営者が多いことも事実です。
その勝利や成功を手にした人々とそうで
ない人々の違いはどこにあるのか?
後者においても前者に劣らぬ研究と努力は
なされているはずです。
その答えは、たったひとつのこと。
それは、本書で繰り返し語られている
『応用の才気』だと思うのです。
読んで得た知識と事例をいかに自身の
問題に投影し、独自の解決策を見い出
せるかにかかっているのです。
本書には、成功するための知識と事例、
そして、応用するための知恵と解決に
向けた考え方が納められています。
本書に取り組めば、『応用の才気』を
身に付ける可能性が高まります。
ぜひ、挑戦してみて下さい。
崩し技と決め技の連繋を重視した孫子の考え方
孫子といえば、やはり、戦わずして勝つ。
「いかに自分が、「漁夫の利」をさらう側
にまわるかが戦略の一つの眼目となる。」
と、著者が語る内容は深く理解できます。
目の前の敵に勝てばよいという単純な思考
では対処できない事例は、非常に多くある
といえます。
予想もしない勢力が突如として殴り込んで
くることもしばしば。
そこで、著者は、こう述べています。
「抽象度を操作すれば、二つは前提を共有
するがゆえに、では、どうしたらよいのか
という対策の叡智も活用しやすい」と。
孫武の孫子について、著者はこう定義して
います。
「孫子は、明らかに崩し技と決め技の連繋
を考えている古典である」と。
クラウゼヴィッツの戦争論が決め技一辺倒
と言われるのとは対照的です。
因みに、崩し技とは、相手の態勢を崩し
て、こちらを有利にする技、決め技とは、
最終的に決着をつける技です。
さて、企業経営において「応用の才気」が
いかに重要であるかということから、
この孫子の教えをどう活かせば良いのか。
ぜひ、本書からその知恵を授かって頂きた
いと思います。
戦い方は人それぞれ。
経験と立場と覚悟によって、その重さと
対処の仕方は、様々です。
しかし、一つ言えることは、
解決できるのは、経営者その人である
ということです。
自分を信じることだと思うのです。
では、本書でぜひ紹介したい教えを
少し引用しておきたいと思います。
【引用5選】
(1)百戦百勝善の善なるものに非ず。
戦わずして人の兵を屈するは善の善なる
ものなり。
百回戦って百回勝ったとしてもそれは
最善の策とはいえない。戦わないで敵
を屈服させることこそが最善の策。
(2)将とは、智、信、仁、勇、厳なり
智謀:先を見通し、謀略を駆使できること
信義:部下から信服されること。
仁慈:部下を思いやること
勇気:実行力
威厳:部下から恐れられること
(3)彼を知り、己を知れば百戦して殆う
からず
彼を知り、己を知るならば、絶対に敗れる
気遣いはない。この有名な言葉には、前段
階がある。
勝利の目算を立てるには5条件をあてはめ
てみればよい。
❶戦力差を鑑みて、勝てない相手とは戦わ
ない
❷勝てる相手とだけ、勝てるやり方で戦う
❸味方が一致団結している
❹情報格差によって、敵は「え、戦うの」
「準備が全然できていない」という状態に
なっている
❺有能な現場責任者に全権委任がなされて
いる
(4)勢とは理に因りて権を制するもの
なり
「勢」とは、その時々の情況にしたがって
臨機応変に対処することをいう。
「思考錯誤」も「臨機応変」も状況に応じ
た柔軟な行動を尊ぶ点では共通するが、前
者は「ひとまず探索してみて、結果をみよ
う」という感じで、失敗が当然のように織
り込まれいる。それに対して、後者は、織
り込まれていない。こちらは、結果を出す
ための対応力に眼目があるからだ。
「致命傷をいかに避けるか」にある。
(5)先ずその愛する所を奪わば、則ち
聴かん
敵の最も重視しているところを奪取する
のだ。そうすれば、思いのままに敵を振
り回すことができる。
「応用の才気」を重視する私の考え方と行動
経営とは、到達点を見出し、そこに向けて
今すべきことに最大限取り組むこと。
それを実現できるかどうかは、「人」に
かかっている。
その環境を構築するために、古典に取り
組む場合もある。
その際に、重く意識すべきこととして、
本書から教えを得た言葉があります。
それが、『応用の才気』です。
学ぶ努力だけでは弱く、学んだ知識を
応用する知恵を磨く必要があると強く
感じることができました。
どうすれば、『応用の才気』を身に
付けることができるのか?
やはり、経験だと思います。
私淑と親炙と行動。
社会貢献ができる理念を掲げ、その
意志を共有できる仲間と共に、目標
を設定し実行できる仕組みを作る。
コミュニケーションを大事にし、
しっかりと後継者を育てながら、
理念を成長させていく。
思考と想像から「創造」し、
見識を持って決断し断行する
「胆識力」を強化する。
こうした取り組みを心を許せる相棒と
仲間と共に経験から学び育てていく
ことだと思っています。
その先には、きっと
『応用の才気』によって築き上げた
成功が待っていると思うのです。
仲間と共に手にした『笑顔』は、
最高です。
まとめ(応用の才気)
今回は、『最高の戦略教科書孫子』
(守屋淳)についてお伝えしました。
経営を志す時、重責を担う時、新たな夢に
向かう時、等々、「孫子」を手にする人は
多いことと思います。
私もその中の一人です。
志を抱き、実現に向けて事を起こす前に
多くを学ぶことは非常に大事です。
私は、多くの私淑と親炙を経験して
きました。
その際に必ず心掛けたことがあります。
著者は、なぜそれをテーマとしたのか?
そして、どう考えたのか?
そのテーマについて、自分はどう考え、
行動するのか?
ということです。
その取り組みを繰りかえしてきました。
そのことが、本書を読んで知った
『応用の才気』を得る為の取り組みに
役立っていたように思います。
特に古典を手にする際には、必ず
目的があると思うのです。
その目的達成をいつも頭に置いて、
考えながら読み込んでいくことが
とても大切だと考えています。
「考える読書」です。
自分を広げてくれます。
あなたもいかがですか、ぜひ!
ボアソルチ。
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
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