科学的商談『脳科学セールス』

書評

『新しいものを試すリスクから何もしない
リスクへと関心が移ると、損失の恐怖が
動機に変わる。そして、今すぐ損失を回避
したいと思うようになる。』

これは、本書『脳科学セールス』
(ジェフ・ブルームフィールド)
記されている言葉です。

営業の現場に長く属した方であれば、
心から得心の行く言葉に思えると
思います。

勿論、私もその中のひとりです。

この言葉を目にした瞬間、私の
「せきがくの旅」が始まりました。

人が「買う」と決断し、実際に購入の行為
に至るには、いくつかのプロセスを経る
ことになります。

ただ、「欲しい!」と瞬間的に感じ、
その場で購入する現実があります。

その実態を本書は、脳科学の立場から
明らかにしていきます。

そして、読者の営業行為に「ある気づき」
を与え、営業手法の進化を示し、支援を
してくれることになると思います。

本書は、12の章で構成されています。
じっくりと、ご自身の体験を振り返り
ながら読み進めて頂ければと思います。

では、営業スキルの向上をご体感頂ける
ことを祈念しております。

・買う理由(と買わない理由)
・従来型の営業 VS. ニューロセリング
・洞穴を訪ね歩くセールスマン
・信頼の神経科学
・変化を嫌う人の心理
・バイアスの心理学
・物語の神経科学
・誰で始め、なぜで導く
・どうやってで終えるニューロセリングの
 5つの物語
・脳の働きを重視した質問
・変化の障害を取り除く
・成約か、積極的関与の始まりか

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本書で学んだ素敵な言葉

『あらゆる人とつながるためには、
あらゆる人に共感してもらえる
信念を示すことが肝要だ。』

(本書「第9章」より)

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決断の科学を使って商談を確実にものにする著者の考え方

『顧客から信頼され、専門知識があると
思ってもらえたら、あとは相手がこれま
でと違う視点で現状を見て、

これまで気づかなかった、あるいは効果的
でない方法で解決しようとしていた問題に
対して危機感を抱くように促すだけだ。』

これは本書「1章」に記されている
内容です。

実に得心の行くことばです。

新しことを提案され、検討を始めると
とても大きな「抵抗」が生じてきます。

そして、なにもしない「現在の状態」を
維持するという安易な選択をするケース
が非常に多いというのが実態です。

しかし、もしそこに
「新たな取り組み」のリスクより、

「なにもしない」現状維持のほうが、
大きなリスクを伴う!ということに、

顧客の眼を向けることができたのなら。

本書は、その「商談効果」をわかりやすく
ポイントを絞り、教授してくれます。

営業という行為の本質を示してくれます。

ぜひ、現状のご自身の営業指針、スタンス
を振り返りながら、素直な気持ちで本書に
私淑され、

コミュニケーションスキルをより高度な
ものに仕上げて頂ければと願っています。

では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
箇所を引用しておきます。

本書に綴られた考え方を知り、自分は
どう考え、どう行動に活すのかを、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。

【引用5選】

❶大脳基底核は本能的な脳、大脳辺縁系は
感じる脳、大脳新皮質は考える脳

商談に入るときには、本能的な脳に訴え
かけてから、感じる脳に働きかけ、
それから、そこで初めて懐疑的な脳に
話しかける。

❷情報の処理は、大脳基底核から始まって
いる。まず最も基本的な「味方か敵か?」
という判断が下される。

大脳基底核の判断は、大脳辺縁系に伝えら
れ、そこで次に「闘うか逃げるか?」と
いう判断が下される。

このような関門をくぐり抜け、ゴーサイン
がでてようやく情報が大脳新皮質に送られ
て、検証とさらなる審査が行われる。

❸人は、現状維持の苦しみが変化の苦しみ
より大きくならない限り、行動を変えよう
とはしない。

❹新しい観点から見込客が抱えている問題
を説明する。つまり、変える選択をしなか
った場合に失われるものを指摘するのだ。

新しいものを試すリスクから何もしない
リスクへと関心が移ると、損失の恐怖が
動機に変わる。そして、今すぐ損失を回避
したいと思うようになるのだ。

❺最大のライバルは競合他社ではない。
現状維持なのだ。

失う可能性のあるものについて語られると
脳は反応する。問題が感情をかきたて、
製品が判断をうながすからだ。

まずは、感情的な判断が行われ、それから
事実やデータによる裏付けがなされる。

変えなければならないという危機感を刺激
するためには、行動に伴うコストではなく
行動しなかったり、

誤った行動をしたりした場合のコストを
問題として提示すべきなのだ。

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本書に私淑して私が思うこと

本書に私淑し、一番印象に残った言葉は、
「引用5選」に記した現状維持のリスクと
変化のリスクです。

最大のライバルが、競合他社ではなく、
「現状維持」
であるとの指摘も、
大変興味深い内容です。

私の営業スタイルは、独自に開発した
「課題整理」型営業です。

「問題の本質」を明らかにするための
現状把握、原因究明をしたうえで、
意思決定(対策提案)を行い、

最後に対策を実行した場合としない
場合のリスク分析を行います。

この進め方で契約に導くことが可能に
なります。

本書にある信頼関係構築後に現状維持の
リスクと回避策を示して契約に導く手法
は、とても考え方が近いように感じます。

本書で解説されている「脳科学セールス」
の中で、本能、感情、理性の展開プロセス
が示された箇所は大変勉強になりました。

話す内容と順番を本書から学び、交渉原本
を改定することの意義は、とても大きな
ものになると感じています。

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まとめ(「信念」)

最後に本書から得たとても貴重な言葉を
2つ記しておきたいと思います。

・あらゆる人につながるためには、
あらゆる人に共感してもらえる信念を
示すことが肝要だ。

・時間を費やして質問を考え、戦略を
構築すれば大きな効果を発揮し、見込客に
共感と信頼を持ってもらい、現状維持では
いけないという危機感を刺激できるように
なる。

これは、本書6章と10章に記されて
いる著者の言葉です。

いかがでしょうか?

「脳科学セールス」の本質がよく表された
表現だと思います。

本能を刺激し、危機感を与え、その対策
として商材を示し契約に導く。

というプロセスだと理解をしました。

脳の構造から営業論が展開された
素晴らしい営業理論だと思います。

しかし、私の中では、なにかひとつ
加えるべきことがあるように感じながら
私淑を続けていました。

そして、最終章まで読み終えて、それが
なにかわかったような気がします。

営業は、やはり人と人との心の交わりの
中で進んでいくものです。

相手が何に困っているのか、まだ重大な
問題に気付いていないのか、どう考えて
いるのか、どんな気持ちでいるのか等々、

ここをしっかりと感じ取れるスキルを
高めることがプラスされるべきことだ
と感じています。

今私が進めている「課題整理」営業は、
こうした思いを形にできる手法である
と強く確認することができました。

本書は、読者が進める現状の営業手法に
必ずプラスの気づきを与えてくれるもの
であると確信しています。

お勧めの一冊です。

ボアソルチ。

株式会社CSI総合研究所
 代表取締役 大高英則

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