『日本の社会では、場所を問わずわけの
わからない議論の論理でことが決定され
ている』
本書『議論のレッスン』(福澤一吉)の
「あとがき」にこう記されています。
就職間もない頃、多くの会議に出席し、
当時全く同じ感想を持ったことを回想
できます。
今となっては、懐かしく思い出されます。
しかし、当時は、本来の議論の方法を
如何に学び、実践するか、
また、本来の会議の目的である
「決める場」を実現するために
奔走し、必死でした。
私は、そうした行動の積み重ねで、
正しく議論を進め、結論をだせる
そうした技術を習得しました。
それは、「合理的思考」と「議論の構造」
を理解することで実現できました。
前者は、「問題解決の思考技術」の著者
飯久保廣嗣氏に親炙し、後者は本書に
私淑しました。
後ほど詳しくお伝えしますが、本書では、
議論の方法を学ぶことで、3つの良いこと
があると記されています。
❶物事を分析的に把握できるようになる。
❷新たな考え方を知り、自己発見できる。
❸議論方法の選択で建設的議論ができる。
ぜひ、本書で学ぶことから得られる効果を
実体験して頂ければと思います。
本書で学んだ素敵な言葉
『論証プロセスを経て結論に至るような
言動のことを「議論」と呼ぶ。』
論証プロセスとは、なんらかの根拠
(証拠)に基づいて、なんらかの主張
(または結論)を導く言語行動。
ものの考え方に気づいていない方へ
![](https://otaka-blog.com/wp-content/uploads/2022/10/smart-725843_1920-1-1024x676.jpg)
「ものを考える」という行為には、
いくつかの種類があります。
「価値創造」、「問題解決」を目的とする
もの、その人の興味具合、境遇によって、
多様性のあるものといえます。
そして、自分の中だけで考えることと、
他人を含めて考えることに分かれます。
自分に対してなのか、他人に対して
なのかは別にして、何れの場合も
「議論」が発生してきます。
しかし、この「議論」の仕方を身につけて
いない人が多いという現実があります。
それ故に、「結論」がだせない、あるいは
時間がかかる、建設的な議論ができない。
最悪な状態は、結論には至ったが、誰かが
不幸になる等のよからぬ状態に陥る。
「ものの考え方」に気づいていないために
辛い思いをし、ストレスに悩む人は、多い
のだと思います。
まずは、「議論」の構造とルールを学んで
頂きたいと思います。
そうすることで「ものの考え方」に気づき
日々の事や人に関する悩みや苦痛が解消さ
れ、楽しく過ごせるようになります。
ぜひ、本書を手に取って普段の人とのやり
とりや議論の状態と照らし合わせながら、
読み進めていって欲しいと思います。
「議論のレッスン」を勧める著者の考え
![](https://otaka-blog.com/wp-content/uploads/2022/10/interview-2207741_1920-1024x683.jpg)
『議論の構造を知ることで、自分の
ものの考え方に気づくという体験を
して頂きたい』
著者は、本書の目的をこのように
記しています。
そして、そのために、議論とはそもそも
なんであり、その議論をわかりやすくする
ためには、どんな予備知識が必要なのかを
解説していくと述べています。
本書では、最初に議論について学ぶと
3つの良いことがあるとしています。
簡単にその内容を以下にまとめて
おきます。
❶議論のあり方を考え、知ることにより、
刺戟的な知的興奮を得られる。
意義ある議論を展開できるようになる。
❷議論を通して、自分を知るチャンスを
得られる。意思決定をする場合、その
プロセスにおいては、自分自身が議論の
相手になる場合が多い。
論拠を探り、ひもといていくことは、
自分自身すら気がついていなかった
自分のものの見方、考え方を発見し、
それに直面することに繋がる。
❸時と場合、内容と程度に合わせて
適切な「議論レベル」を選択できる
ようになる。
議論の内容によっては、ルールを適度に
提案することでより建設的な議論になる。
次に、本書で最も重要と思われる
「議論スキル」が満たされているかどうか
という基準を記しておきます。
質疑応答の際に意識すべきこととして、
大変参考になります。
❶発言者の主張が明示されているか。
❷発言者の主張がなぜ主張として成り立つ
かを示す根拠なり、証拠なりを提示して
いるか。
❸隠された根拠に関する言及があるか>
❹主張への飛躍のしすぎはないか、
論拠が正しく行われているか。
❺質疑応答において、聞かれていること
に答えているか。
以上は、本書「議論のレッスン」での
主要箇所と判断した内容になります。
議論が必要な場面においては、いつでも
実践できるように理解を深めておくことが
肝要かと思います。
本書で、ぜひ紹介しておきたい議論に関す
る考え方を少し、引用しておきたいと思い
ます。
【引用5選】
❶議論の定義
自分が一番言いたいことを「主張」又は
「結論」と呼びます。
主張と対になって提示される理由を
「根拠」、「証拠」と呼びます。
主張を根拠によって裏付けようとする
行為または、どうしてこれこれしかじ
かの主張結論になるかの理由を述べる
ことを「論拠」と呼びます。
❷議論の種類
根拠の適切性、根拠から主張への飛躍
の程度の吟味、隠された根拠の明示が
要求されないのが、日常の議論。
一方これらの内容の明示が必要である
のが、フォーマルな議論。
❸トゥールミンの議論モデル
トゥールミンの議論モデルを使うのは
隠れた根拠を光に充てることで分かり
にくくなりがちな議論を分かりやすい
議論にするためである。
論拠は、非顕在的である。
論拠には、裏付けが必要である。
裏付けとは、仮定の集合である。
❹議論のルール
反論を許すだけの議論構造を用意してから
主張すること。
議論の下準備が必要である。自分の主張は
論証を経ているか、根拠が提示されている
か、根拠に偏りはないか、根拠は主張を支
持するのに適切か、根拠から主張への飛躍
は適切か、論拠は明示されているかを考え
ておく必要がある。
❺主張の正当性
ある主張、結論にいたるまでにどの程度
正しい論証がなされたかを吟味してはじ
めて、その主張、結論の正否に関する判
断が可能となる。
「議論技術」は早い時期に習得すべきとする私の考え
![](https://otaka-blog.com/wp-content/uploads/2022/10/geometry-gc44742cad_1920-1024x574.jpg)
『議論技術を身に付けるべきである』と
私は強く感じています。早い時期に。
それは、多くのひとが、社会に出る前に
教育を受ける機会がなく、議論に苦慮
するケースが多いと感じるからです。
私も社会人になったばかりの頃、
会議の場で、そう実感しました。
そして、議論の仕方に関する書籍を
探しました。
「議論に絶対勝てる方法」、
「ハーバード流交渉術」等々、
「やくざに学ぶ交渉術」まで
多くの書籍を読み漁りました。
そして、いろいろな議論の仕方を実際に
会議で試し、改善しながらこれならばと
いう「議論技術」に仕上げました。
そうした試みの中で、本書は、大変参考
になりました。
まずは、多くを学び、実践し、自分に
あった形を創り上げることが大事だと
感じています。
これは、「議論技術」に限ったことでは
なく、例えば、「問題解決の手法」等、
多くのことに共通して言えることです。
では、私が本書を中心に他書籍の教えを
参考に考え、実践している「議論技術」
についてお伝えします。
(1)相手の主張に同意できるかどうか
を見極める。
(2)主張に同意できなければ、議論の
開始である。根拠の正当性を確かめる。
確かめ方は、以下の4つ。
❶根拠が「事実」であれば、確認する。
❷根拠が「仮説」であれば、検証する。
❸根拠が「信念」であれば、共感できる
かどうかを判断する。
❹根拠が「傲慢」であれば、絶対に
許してはならない。
(3)根拠は正しいが、主張に同意でき
ないのであれば、主張と根拠の繋がりに
問題がある。それを確かめる。(論証)
以上が、私の「議論技術」です。
どのようにお感じになりましたか?
ぜひ、「議論技術」について、議論を
してみて頂ければと思います。
できる限り多くの人と。
年代、性別、業種を越えて、
議論をしてみて下さい。
それまでとは異なった、多くの発見が
あると思います。
そして、構築した「議論技術」を
社会に出る前の子どもたちにも、
ぜひ、教えてあげたいのです。
まとめ(「議論のレッスン」)
![](https://otaka-blog.com/wp-content/uploads/2022/10/math-gb71c91baa_1920-1024x575.jpg)
今回は、『議論のレッスン』(福澤一吉)
についてお伝えしました。
著者は、「終章」において、次のような
表現で注意をしています。
『議論スキルは、諸刃の剣でもある』
むやみやたらに議論の必要のない場面で
試し切りをし、自分が大けがをすること
もあるかもしれません。
ですので、議論すべきかどうかは、
最初に判断をしなければなりません。
そのためには、その判断基準を明確
にして備えておく必要があります。
ボアソルチ。
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
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