『沈丁華 言葉少なに 別れけり』
こういう句をさりげなく配する粋を
本書から学びたいものだ。
これは、本書『人間学』(伊藤肇)の解説
に記されている藤田忠司氏の言葉です。
本書を読み終えて、素直に思いを表わす
なら、この藤田氏の言葉の響きに相乗り
するのが良い、とそう感じています。
この読後感を敢えて引き出し言葉にすると
すれば、古典的な叡智を学び、粋な情念に
触れ、人知の奥深さを考えさせられたとい
うところです。
そして、またひとつ、自分を広げることが
できたことに喜びを感じます。
「生涯、何度も繰り返して読みたい」
そう思える本を探し続けて、
「せきがくの旅」を続けています。
現在、3冊をあげるとすれば、
・「自省録(マルクスアウレーリウス)」
・「人間の建設(小林秀雄/岡潔)」
それに加えて今回お伝えします本書、
・「人間学(伊藤肇)」
です。
「行動の原理、人生の原則」という
言葉が、私の深奥で、とても意味深く
感じたのが理由です。
そして、最も心に残ったのが、
「心友」という言葉です。
「3人の心友をもて」という著者の言葉の
意味を辿ることは、非常に価値あることだ
ったと感じています。
著者の深い思いを秘めた箴言を心に留め、
しっかりと自分の心で考え、行動に移す。
学ぶことはあくまでも前段の行為、行動に
移してこそ、多くの貴重な時間を共有した
先にある「価値」と言えると思うのです。
ぜひ、一読して頂き、ご自身の肌感に合う
と思えたならば、近き所に置き、繰り返し
所望の箇所を捲り、価値ある時を過ごして
頂きたい、とそのように思うのです。
本書は、以下の8章で構成されています。
・人間学とはなにか
・人品骨柄の人間学
・応対辞令の人間学
・出処進退の人間学
・修己治人の人間学
・原理原則の人間学
・側近の人間学
・幕賓の人間学
本書で学んだ素敵な言葉
正義が力であることを信じよう。
信頼の上にたって、われわれは自分がなし
得ると思う仕事の中でベストを尽くそう。
本書「第三章」で紹介されている
リンカーンの言葉より
原理原則に従った行動指針を作り歩んでほしい!
『新しい世界に入るには先達に教えを乞い
関連法規を学ぶ』
これは、本書の「第三章」に記されている
著者の言葉です。
・実施すべきか、どうか?
・どの選択肢を採用すべきか?
等々、人生は選択の連続です。
なにかを基準に考えなければ、決断に時間
がかかり、しかも、必ず上手くいく保証は
ありません。
「その判断は、正しいことを基準に
考えた結果なのか?」
私は、正しいことの基準は「原理原則」に
従っているかどうかだと考えています。
本書に私淑することで、行動の原理と
人生の原則を学ぶことができます。
そして、正しいことの判断ができれば、
あとは、論理的な思考の技術を学び、
実践する。
そうすれば、限られた情報と時間の中で
いかなる予期せぬ問題が生じても、そう
時間をかけずに解決への道を見い出せる。
心からそう信じて人生を歩んでいます。
原理原則に従った正しい基準を学び、
効率の良い行動指針を生み出すための
思考技術を学ぶ。
私は、前者は、本書「人間学」から、
後者は、「問題解決の思考技術」から
そのことを学びました。
ぜひ、この2冊、「せきがくの旅」を
なされますことをお勧めします。
人生を如何に生きるかを重視する著者の考え方
『学問は人間を変える。また、人間を変え
るような学問でなければ本当の学問ではな
い。そして、その人間とは他人のことでは
なく自分のことである。他人を変えようと
思ったらまず自分を変えることである。』
これは、本書「人間学」(伊藤肇)の
第一章に記された言葉です。
炯眼で捉えた深みのある指摘だと感じまし
た。まずは自ら扇動して学ばなければなら
ないと、意識改革への思いは強まります。
『「人間を変える学問」とは何か。』
こう著者は、問いかけています。
そして、それは、「心性の学」であり、
「人間学」であると自答しています。
著者は、次のようにその真意を記して
います。
『人生とは、いかに喜び、いかに怒り、
いかに哀しみ、いかに楽しむかという
こと。
つまり、「いかに生きるか」ということに
「正しい自律」をたてること、
「原理原則」をもつことである。
そして、この「正しい自律」や
「原理原則」が「心性の学」であり、
「人間学」である。』
本書に私淑する意味は、「心性」を学ぶ
ことにある、と得心が行きました。
「人間が変わる」ということについては
幼いころから、長く考えてきました。
それは、今でも考え続けています。
自分を変える必要はない!
変えたくない!
この思いは、とても強いというのが
正直な気持ちです。
補足をするとすれば、その対象は、
大事にしている考え方であったり、
「矜持」、あるいは「信念」という
ことになると思います。
しかし、変えるべきは変えなければ、
進歩と成長はないということは、重々
理解をしています。
そんな思いの中で、一冊の書籍に出会い
心の持ちようを整理できました。
「芭蕉入門」(井本農一)です。
「不易流行」という言葉が、私の気持ち
を整理してくれました。
本質は変えず、成長のために変えるべき
は変えていく必要がある、ということを。
こうした経緯により、本書「人間学」に記
された著者の考え「人間を変える学問」の
意義と価値を理解しています。
多くの人に、より良く人生を生きるために
本書を読んで頂きたいと願っています。
では、本書の中で私が特に興味を惹かれた
箇所を引用しておきます。
本書に綴られた考え方を知り、自分は
どう考え、どう行動に活すのかを、
ぜひ、考えてみて頂ければと思います。
【引用5選】
❶人間を変える学問
何度も読み返し得る一冊の本を持つ人は
倖せな人である。さらに数冊を持ち得る
人は至福の人である。
(フランスの文学者モンテルラン)
❷人間が人間を信ずるということ
人間が人間である以上、何かを信じなけれ
ば生きてゆく意味がない。
いったい何を信じればいいのか。それは、
人間が人間を信じるということである。
それ以外に手はない。
❸知識と見識と胆識
応対辞令とは、知識、見識、胆識の反映と
いうことになる。
「こうすべし」という判断は、人格、体験
悟りが内容となってくる。これが見識であ
る。
あらゆる反対、妨害を断乎として排除し、
実行する知識や見識が必要となってくる。
それを胆識という。
胆識とは、決断力や実行力を持った知識
や見識のことである。
❹修己治人
上に立つ者は魅力がなければならない。
魅力がなければ人はついてこないし、
人がついてこなければ仕事はやれない。
その魅力の基本が、「修己治人」である。
協力を得られるのは、鋭さではなく、
人格の力である。(ドラッカー)
❺帝王学の三つの柱
帝王なる者は最高の魅力、「深沈厚重なる
は第一等の資質」を身に付けなければなら
ない。帝王学には三つの柱がある。
第一に、原理原則を教えてもらう師を持つ
こと。第二に、直言してくれる側近をもつ
こと。第三に、幕賓をもつこと。
本書に私淑して私が思うこと
『人生経験の深さ、世界観、読書歴、
あるいは、流した涙の量などによって、
「人物像」が決定されてしまう。』
これは、本書において安岡正篤の言葉と
して紹介された一節です。
「流した涙の量によって人物像が決定され
る」という言葉がとても心に残りました。
この言葉に出会えただけで、本書を手にし
た意義はあったと思っているほどです。
「流した涙の数と量」という表現は、いろ
いろな物事の尺度に使われます。
しかし、人物像の評価に照らすと、
なるほどその人の人間としての深みを
感じることができるように思えます。
私が本書を手にしたのは、「正しいこと」
を見極める力を得る為です。
問題が生じ解決策を見い出す時、あるいは
新たなものを生み出すときに、判断をし、
決断をし、行動に移す際に必ず考えること
があります。
それが、「正しいこと」を基準にしている
かということです。
そのためには、学ぶこと、経験することが
肝要であることは理解できます。
しかし、いまひとつ、重厚な心得を求めて
いたように思います。
それが、本書「人間学」に私淑し、
気づけたように思います。
流した涙の量、「心の涙の量」であると。
言葉というものは、本当に不思議です。
ひと言で深い思いを表すことができる。
「正しいこと」は、「心の涙の量」で
計れる、そう感じています。
またひとつ、自分を広げることができた、
自分を変えることができたように思って
います。
まとめ(「行動指針」)
「人間学」とは、何か。
それは人生をいかに生きるかという
「原理原則」を学ぶことである。
これは、本書「人間学」の裏表紙に
記されている内容です。
いかに生きるか、生きるべきか。
それは、「正しく生きること」だと
考えています。
では、どうすればそうできるのか。
その答えが、「原理原則」であると、
今は自信をもって言えます。
本書は、出処進退のあり方、リーダーの
心得、人間関係の要諦等々、人生を生き
抜くための原理原則を教えてくれます。
行動指針の中核を成す考え方となる、
行動の原理、人生の原則を学んで頂き、
飛躍的に人生を向上させて頂きたい、
とそのように願っています。
良い「せきがくの旅」を!
ボアソルチ。
株式会社CSI総合研究所
代表取締役 大高英則
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